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記憶を失ってから、幼なじみの彼のルームメイトに恋をした
記憶を失ってから、幼なじみの彼のルームメイトに恋をした
著者: にゃんにゃん君

第001話

赤信号を無視した車に跳ね飛ばされた瞬間、私は自転車ごと宙を舞った。

頭の中がジンジンと響き、手を伸ばして触ってみると、手のひらにはべったりと血がついていた。

ぼんやりと、周りの人たちが「大丈夫か!?」と叫びながら駆け寄ってくるのが聞こえ、そのまま意識が遠のいていった。

気を失う直前、私はどうしても頭の中から離れない、少し前に受け取った動画のことを思い出していた。

その動画は、薄暗いカラオケの個室で撮られたものだった。そこには、大学生のグループが集まっていて、私の彼氏、藤木悠馬もいた。

私にいつも優しく、十年来の幼なじみでもある彼が、動画の中では泥酔していた。そして彼の隣で、彼の背中を優しくさすっているのは、同じサークルの先輩、佐々木美咲だった。

「悠馬、もう飲まない方がいいよ。身体に気をつけて」

美咲先輩の瞳は、まるで心から心配しているかのようで、暗がりの中で悠馬にどんどん寄り添っていく。

しかし、悠馬はそれを拒む素振りも見せなかった。

隣から誰かが言うのが聞こえた。「悠馬、彼女に電話して迎えに来てもらったら?」

悠馬は酒を持ったまま手を振り、酔っ払った声でこう言った。

「やめとけ、絶対呼ぶなよ。あいつが来たら頭痛くなるだけだ」

「せっかく隠れて出てきたんだから、やっと静かにできる。こんなにうるさい女、人生で初めてだよ」

その動画は誰かから匿名で私のメールに送られてきた。何度も再生してみたが、藤木悠馬の目に映る私がこんな風だなんて、到底信じられなかった。

私は悠馬とは幼なじみで、高校生の時に正式に付き合い始めた。周囲からは「理想のカップル」として公認されていた。

お互いの家庭も釣り合いが取れていて、あと1年で卒業という時期には、両家の親同士が羽川市での新居購入を話し合い、卒業後すぐに結婚式を挙げる計画まで進んでいた。

動画の中、悠馬があの言葉を口にした後、隣の佐々木美咲先輩が、わざとらしく火に油を注ぐような口調で言った。

「え、嘘でしょ?後輩くん、彼女とはずいぶん長い付き合いじゃない。普通なら、愛情たっぷりって感じじゃない?」

すると悠馬は目を上げて、皮肉げに笑いながら言った。

「俺に彼女の悪口なんか言う資格あるか?彼女の両親はもちろん、俺が別れ話を切り出そうものなら、自分の親にだって叱られるだろうな」

「周りはみんな羨ましがってるけど、俺にとってはまるで鎖みたいなもんだよ。大学で自由に恋愛できるみんなが、本当に羨ましいよ。俺はずっと彼女に縛られてるんだからさ」

ここまで見た時、視界が少しぼやけた。手で顔を拭うと、もう涙でいっぱいになっていた。

自分では愛情が深いと思っていた関係も、彼の目には、私はただの抜け出せない「鎖」でしかなかったんだ。

動画の最後には、少し苛立ちの混ざった冷たい男の声が聞こえてきた。「黙らせろよ」

だが、私はもうそれどころではなかった。この動画を持って、直接藤木悠馬に問い詰める決意を固めていた。

私は斉藤志織。別にしつこく追い詰めるような女じゃない。悠馬が私を「鎖」だと思っているなら、私は彼を自由にしてやるだけだ。

しかし、運命は皮肉だった。自転車で交差点に差し掛かった瞬間、赤信号を無視した車に出くわしてしまったのだ。

頭がクラクラとする中、私はゆっくりと目を開けた。激しい頭痛が襲ってきたが、それと同時に、かすかに声が聞こえてきた。

「助かったな、あれだけ飛ばされたのに軽傷だとは。ヘルメットを被っていたおかげだよ」

近くで話している医者の声だった。

その横で、少し冷たいが震えを帯びた声が聞こえてきた。

「でも、まだ血が出ているじゃないか」

「頭には少し傷がある。まあ、仕方ないな。深刻なものではないが、病院で手当てをした。あとは患者が目を覚ますのを待つしかない」

続いて、別の男性の声が響いた。

「先生、ありがとうございます。本当に感謝します」

その後、また別の男性が焦ったように言った。

「で、彼女はいつ目を覚ますんだ?こっちも急ぎの用があるんだよ、こんなに長く待っていられないんだけど」

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