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第003話

私は藤木悠馬の顔に満ちた険しい表情を見て、訳が分からず、陸川蓮の方を見た。だが、彼も同じように険しい顔で、冷たく入ってきた男を睨んでいた。

「陸川蓮!」と藤木悠馬は歯ぎしりしながら名前を呼んだ。

病室の空気が明らかに悪くなってきたのを感じた私は、陸川蓮の前に立って、彼をかばうようにした。

「私の彼氏に何か用?」

そう言った瞬間、藤木悠馬の表情が一瞬、歪んだのが見えた。

陸川蓮は私の髪を軽く撫でながら、小さな声で言った。

「ちょっと彼と話があるんだ。ここで待ってて」

そう言うと、彼は半ば強引に藤木悠馬を外に連れ出し、病室のドアを閉めた。

私はドア越しに、外から断続的に聞こえてくる声をかすかに耳にしたが、その内容までははっきり聞き取れなかった。

「陸川蓮、お前、正気か!?志織が......」

「それは、お前が自分で選んだことだろう」

「いいよ、わかったよ。ああ、お前が勝ったってことだな。志織はお前に譲ってやるよ。でもな、彼女が記憶を取り戻したら、お前のことをどう思うかな!」

私は眉をひそめて、さっきの会話の意味を考えていたところ、突然ドアの外から鈍い音が聞こえた。

なんと、二人が殴り合いを始めていたのだ。

病室のドアを飛び出すと、既に周りの人たちが二人を引き離していた。

私はまず陸川蓮の元へ駆け寄り、彼が無事か確認すると、ようやく少しホッとした。

そして、怒りを込めて横で半ば倒れている藤木悠馬に目を向けた。

陸川蓮に比べて、藤木悠馬は額に大きな青あざができ、口元も切れて血が流れており、かなり惨めな様子だった。

「藤木悠馬、彼がどうやってあなたを怒らせたのかは知らないけど、今日の騒ぎはあなたが先に仕掛けたんだよね。もし警察を呼ぶことになっても、私はそのまま事実を話すから」

「この前、自分で『隣人』だって言ったよね?ってことは、私たちの両親も顔見知りってことだよね?お互いの家族関係がぎくしゃくするのは避けたいんじゃない?」

そう言うと、藤木悠馬は驚愕したような目で私を見つめ、呆れたように口を開いた。

「おい、志織、まさか頭まで打っておかしくなったんじゃないか?」

「よく見ろよ、陸川が俺を殴ったんだぞ。それなのに、お前は彼をかばうのか?」

私は眉をひそめた。なぜか藤木悠馬の言葉の中に、妙な悲しみのような感情を感じ取り、思わず寒気が
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