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第004話

私は少し眉をひそめた。なぜか、この女の子には無意識にあまり良い印象を抱けなかった。

それでも、礼儀正しく「こんにちは」と挨拶を返した。

その女の子は笑顔を浮かべながら私を見て、「悠馬君が言ってたけど、事故にあったんだって?体は大丈夫?」と心配そうに尋ねてきた。

彼女がただ心配してくれているのを感じたので、私は心の中の違和感を押し隠し、笑顔で答えた。「大丈夫です。ちょっと記憶が抜けてるだけで、先生にはすぐに元に戻るって言われました」

藤木悠馬は小さく笑い、腕をその女の子の肩に回して、親しげな姿勢を取りながらも、視線はずっと私に向けられていた。

「先輩、そんなに色々話さなくてもいいんだよ」

そして、彼は私の目の前に立ち、薄目で私を見下ろしながら傲慢な態度で言った。

「そうだ、志織。君のご両親が今度の週末、一緒に帰省しようって言ってたけど、

悪いね、俺、週末は先輩と一緒に展覧会に行くから、君とは行けないんだ」

藤木悠馬が「先輩」と呼んだその女の子は、私に微笑みかけ、まるで申し訳なさそうに見えた。

「ごめんね、後輩ちゃん。悠馬君の時間、ちょっともらっちゃって。怒らないでね?」

私は眉をひそめ、無意識に半歩後ろに下がり、二人との距離を取った。

「なんで私が気にすると思うの?」

「藤木さん、これからはもう君に付き合って帰る必要はないわ。私には自分の足があるし、勝手に帰れる。それに、もう君の時間を奪うこともない」

「それに、何かあったら、まず蓮君を頼るから」

「斉藤志織!」藤木悠馬は歯ぎしりし、目の奥に苛立ちが走った。

「お前、今陸川と一緒にいるけど、彼が本当にお前を好きだと思ってるのか?」

「俺は彼と3年間ルームメイトだったけど、あいつが誰かを好きになったことなんて一度もない。大学の3年間、恋愛なんて一度もしなかった。そんな奴、絶対どこかおかしいに決まってるだろ。もしかしたら、お前をただのタダで手に入ったおもちゃとして見てるかもしれないぞ!」

その言葉を聞いた瞬間、胃の奥がムカムカして、嫌悪感が込み上げてきた。私は藤木悠馬を軽蔑の目で見た。

「あんた、頭おかしいんじゃない?」

藤木悠馬は冷笑しながら言った。「どうした、俺の言ったことが図星だったか?お前はやっぱり......」

突然、私の前に一つの影が立ちはだかり、藤木悠馬の視線を遮った
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