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第006話

「そうよ、あなたは小さい頃から悠馬くんと結婚したいって言ってたじゃない。もう三年も付き合ってるんだし、ずっと仲が良かったでしょ?それに、もうすぐ卒業だから、先に家を買っておこうってお父さんと相談して決めたのよ。後になって家の値段がもっと上がる前にね」

「待って!」私は大きな衝撃を受け、完全に混乱してしまった。

藤木悠馬と結婚したいって、私が小さい頃から言っていた?何それ、どういうこと?

私は反論しようと口を開いた瞬間、突然、誰かの腕が私の肩に回り、私を横に引き寄せた。

振り返ると、そこには深い笑みを浮かべた藤木悠馬の目があった。

「分かりましたよ、おじさんおばさん。安心してください、ちゃんと帰りますから。志織のことも心配いりませんよ、だって......」

彼の目が一瞬光り、「僕は彼女の彼氏ですから、彼女の面倒を見るのは当然のことです」

私はその場で立ち尽くし、瞳が揺れた。

両親の言葉、ルームメイトたちの反応、藤木悠馬のこれまでの不可解な態度、そして――

陸川蓮の以前の奇妙な反応。

全てが繋がり、答えは明白だった。

頭がズキズキと痛み、消えていた記憶が徐々に浮かび上がってきた。

私は思い出した。

藤木悠馬――この、私が心の底から嫌悪している男が、確かに三年間恋人関係にあった人だった。

十年来の幼馴染で、かつては私が一番愛していた男だったのだ。

そして、陸川蓮は、ただ「顔見知りのクラスメート」に過ぎない。

もし藤木悠馬とルームメイトでなければ、私の視界に入ることさえなかったかもしれない。

私はその場に立ち尽くし、手足が冷たくなるのを感じた。鏡を見なくても、自分の顔が今、どれほど青ざめているか分かる。

だが、陸川蓮の方を見ると、彼こそが本当に血の気を失ったような顔をしていた。彼の淡い琉璃色の瞳には、今まさに絶望以上の感情が宿っていた。

「志織、どうしたの?具合が悪いの?」

藤木悠馬がわざと体を動かし、陸川蓮の視線を遮った。

「お腹が空いてるんじゃないか?まだご飯食べてないでしょ?おじさんおばさんもお腹空いてるんじゃないですか?近くで食事でもどうですか?」

母は藤木悠馬に向ける視線が、まさに「娘婿を見る目」で、とても満足そうだった。

「そうね、悠馬くんの言う通りだわ。志織、何かあっても後にして、まずは食事に行きましょう」

藤木
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