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第41話

哲也は今回本気だった。すぐに会社のホームページに弁護士からの通告を掲載し、美緒を訴えて謝罪と会社の損害賠償を要求すると宣言した。

ホームページだけでなく、Xやネット掲示板などのプラットフォームにも新若の声明が掲載され、本格的に動き出す様子だった。

新若がこれほど強気な態度を見せる一方で、新生側は完全に沈黙を保っていたため、世論の傾向は明らかだった。

発表会での出来事は謎めいていて、美緒が無実だと信じる人もいたが、新若の態度表明によってすぐに立場を変えた。

もし後ろめたいことがないなら、なぜ新生は声明を出さないのか、なぜ美緒は有利な証拠を提示しないのか。

新若の責任追及に対して、美緒の反応は実に冷静だった。彼女は弁護士からの通告に対して、「いつでも付き合います」という一文だけを返信した。

一見さらりとした一文だが、それぞれの文字に軽蔑の念が滲み出ており、新若の警告など眼中にないかのようだった。

この返答はすぐに話題を呼び、一時はトレンド入りした。

調香師という職業はそれほど一般的ではなく、香水や化粧品は新製品発表や有名人の起用がない限り、めったにトレンド入りしない。

しかし最近は、この「スキャンダル」と「バトル」のおかげで、頻繁にトレンド入りしていた。

この件は業界を超えて注目を集め、多くの傍観者は「盗作はよくあるが、こんなに強気な盗作は見たことがない」と述べた。双方とも自分に非はないと主張し続けるため、真相を見極めるのは難しかった。

傍観者の熱狂に比べ、当事者はあまりにも冷静だった。美緒は新生に向かう途中で、直美からの電話を受けた。

「休暇から戻ったの?」

美緒は軽やかに笑ったが、直美の声は焦りに満ちていた。「旅行先で会社の弁護士通告を見たわ。大丈夫?証人として出廷する必要はある?」

美緒は噴き出して笑った。「必要ないよ」

「私を巻き込むのを恐れる必要はないわ。今となっては、私が立場を表明しなくても、哲也は私を許さないでしょう」直美は心の中でよくわかっていた。

この期間、彼女は旅行を口実に携帯の電源を切り、別の私用の携帯だけを使っていた。戻ってきて電源を入れると、多くのメッセージが届いており、すぐに休暇を終えて会社に戻るよう求めるものばかりだった。電話の着信数は想像に難くなかった。

なぜ彼女に戻ってくるよう求めているのか、考えるまで
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