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第40話

耀介が美緒のためにここ数日間してくれたことは、哲也が数年間できなかったことで、できるはずもなかったことだった。

「だって……君は俺の嫁だからな」

彼女は少し恥ずかしそうだが逃げ出さない。彼女の反応は耀介にとって大きな励みとなった。

彼は満足げに口元を上げ、そのキスを深めた。

——

哲也は家に帰ると、完全に意気消沈していた。

まさか自分が刃物を首に突きつけられて脅されるなんて思いもしなかった。しかもその人物が美緒だなんて。

彼女はどうしてあんなに格闘技の腕前があるんだ?いつ練習したんだ?自分はなぜ知らなかったんだ?彼女には一体どれだけ自分の知らないことがあるんだ?

「ガチャン」足元で破片を踏み、鋭い音が響いた。

この散らかった中で、綾子はリビングのソファに座り、クッションを抱えていた。彼が見ると、すぐにそれを投げつけてきた。「やっと帰ってきたのね!」

少しずれて、クッションは後ろのドアに当たり、床に落ちた。

「何をしているんだ」

身をかがめて拾い上げ、破片を避けながら注意深く歩み寄り、彼女の隣に座った。

予想はしていたが、このような光景を目にすると、やはり心が乱れた。

「何をしているって?」体を起こし、綾子は彼の方を向いた。「聞くけど、これからどうするの?水野が記者会見で言ったことは全部聞いたでしょう。私は彼女は信用できないって言ったのに!あなたは信じなかった!今や彼女は絶対に譲らない。私はもうXにログインするのも怖いのよ!」

「なぜログインが怖がるの?」哲也は言った。「後ろめたいことなんてないだろう。堂々としていればいい」

「もういいわ。そんな言葉は記者に言えばいいの。今は対策を考えてほしいの。私をなだめるんじゃなくて!」

哲也の腕を引っ張って甘えながら、彼女が記者会見から怒って退場したのは、もはや質疑応答を続けられなくなったからだった。

美緒がこれほど騒ぎ立てるなら、続けて自分に不利になるだけ。怒りの態度を見せて、先に退場した方がいいと判断したのだ。

「今になって対策を考えろって?記者会見を退場するときになぜ言わなかったんだ?」彼女を横目で見ながら、哲也は不機嫌そうな顔をした。「そうやって退場すれば、記者たちがどう書くか分かっているのか?恥じ入って怒った?後ろめたさを感じた?」

「でも退場しなければ、もっと悪くなったでしょう
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