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第16話

いつもおとなしい美緒が、まるで別人のように見える。彼女が壇上で堂々と主張している様子には、自分も思わず顔を見間違えたかと思ったほどだ。

全く予兆がなかった!

いきなり現れて、新若の名誉を台無しにしかけた。

もし彼女がまだ利用価値があるからと我慢しているのではなければ、殺してしまいたいぐらいだ!

昨日、これほどの変化があったということは、まさか……彼女は自分と綾子とのことを知ってしまったのだろうか?

とはいえ、そんなことはあり得ない!

もし彼女がそれを知っているのなら、どうして騒がない?泣きも叫びもしないなんて、女性としての正常な反応とは思えない。

「彼らが言っているのは……」

二人の焦りと怒りを必死に隠そうとする姿を見て、美緒はただ笑ってしまった。

彼女は、最悪の場合には立場をはっきりさせるつもりだった。結局、自分は新若と契約しているわけではないのだから、堂々と立ち去り、自分に属するすべてのものを持っていけばいいと思っていた。

しかし、思いもよらず、彼らはまだ演技を続けている。

本当に彼女がここまで愚かだと思っているのだろうか?昨日あれだけの騒ぎになったのに、また彼らに従って働くと思っているのか?

美緒は少し鈍いかもしれないが、そんなに馬鹿ではない。

彼女はわざと彼らの興味を引くように、ゆっくりと歩を進め、頭を下げて、まるで非常に困って悩んでいるように見せかけた。

彼女の背後で、綾子と哲也が目で合図を交わし、お互いの目には「やっぱり誰かの仕業だ」という意味が読み取れた。

「彼らは何を言ったんだ?」哲也が急いで尋ねた。

「あのね……」頭を垂れたまま彼女は首を振り、非常に苦しんでいるように見せた。

実は心の中で声を上げて笑いそうだった。まさかこの二人が自分に振り回されることになるとは。

他人に踊らされる気分はどう?でも、本番はこれからだ!

そして美緒は彼らとの芝居をしっかり演じようと決めた。

彼らは演技が好きで得意だろう?ならば、この舞台を最後まで盛り上げてやろう!

彼女の姿を見つめ、言葉を飲み込みながら話す様子に、綾子は歯がゆい気持ちを抑えきれなかった。

昨日の出来事で血を吐きそうになるほど怒っていたが、もし美緒が騒がなければ、自分はすでに見事に賞を獲得し、一面に載ることになっていたのだ。

しかし、今、新聞には彼女の倒れた写真が載り、様々な耳障りな言葉が並び、彼女が盗作したとの曖昧な情報が流れている。

こんなことになったのは、全ては美緒のせいだ。

だが今は、彼女と争う時ではない。

そんなことを考えながら、綾子は前に出て美緒の進路を遮った。「美緒ちゃん、早く言ってよ!彼らは一体何を言ったの?言わないなら、私が彼らと話をつける。こんな風に人を引き抜くなんて、あまりにも不正だったわ!」

そう言いながらも、全く動く気配がなかった。

道を塞がれた美緒は立ち止まり、突然顔を上げて、もう言葉を吞み込むこともせずに、早口で言った。「彼らが言ったのは……」

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