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第6話

長年にわたって罵られ続けた。それなら本当に一度、恩知らずになってみるのも悪くない。

県大会で優勝してみせる。絶対に全国大会で一位を取る。そして、国家代表選手団に選ばれてやる。

ここを出て、自分の本当の居場所を見つけてみせる。

11、

私は神様に恵まれたことはなかった。

県大会は県庁所在地で行われる。この小さな町から県庁まで行くのには、かなりの時間と費用がかかる。

父がくれた二千円、ずっと使わずに大切にしていたが、それでも全然足りなかった。

指先が、祖母からもらったネックレスのペンダントをそっと触れる。これは祖母が私に遺してくれた唯一のものだった。

祖母は亡くなる前、このペンダントを私の手に握らせてこう言った。

「貯めた金はここに全部入ってるよ。清良、金が必要になったら、おばあちゃんのペンダントを売ってね。絶対にためらっちゃいけないよ。清良が数学者になるところを見たかった、もうできないみたいだ……でもおばあちゃん、天国から清良を見守っているからね……」

おばあちゃん……おばあちゃん……

涙が堰を切ったように溢れ、視界がぼやける。

何度も何度も祖母の言葉を心の中で繰り返す。

ペンダントを握る手に力が入っていく。

その瞬間、私は完全に決意した。

おばあちゃんの期待を絶対に裏切らない。優秀な数学者になるんだ。

買取店に足を踏み入れたその時、神様が私に微笑むなんて、夢にも思わなかった。

安奈が私を見つけ、目を輝かせながら言った。

「私も県大会に行くの!一緒に行かない?」

彼女の好意を拒むことはできなかった。

握りしめたペンダントが、より一層重く感じられる。

こんな小さな県城から県庁まで、17年かかった。

そして試験会場に座った時、私は無意識に緊張していた。

この数日、図書館でたくさんの問題を解いたが、それでも緊張は収まらなかった。これが私にとって唯一、母から離れる方法だったからだ。

ペンのキャップを閉じた後も、手の震えが止まらなかった。

試験が終わり、安奈は目を赤くしてこう言った。

「絶対落ちたわ」

そして私に抱きしめながら言った。

「清良は絶対、全国大会に行ってね!」

「清良?」

背後から、聞き覚えのある懐かしい声がした。

安奈は驚いたように声をあげた。

「児島先生!」

しかし、私は振り返ることができなかった
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