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第11話

父は緊張した面持ちで応接室に座り、時折手をズボンに擦りながら汗を拭っていた。

それは、私が初めて父の顔に取り入るような笑顔を見た瞬間だった。

私が部屋に入ると、彼はすぐに買ってきた一箱の牛乳を私に差し出した。

「清良、父さんは君に頼みがあるんだ。君の妹は数学が特に苦手だから、時間があれば、教えてやってほしい」

私は少し驚き、目を見開いた。

父は数学の先生じゃなかったの?どうして妹の勉強を教えるのに私の助けが必要なんだろう。

父は気まずそうに、薄くなった頭髪をかき上げながら答えた。

「家族の間だと、うまく教えられないこともあるんだよ。君もわかるだろう、妹には厳しく言えなくてさ」

胸が一瞬締めつけられた。

昔、父は私を家からほうきで追い出し、石を投げつけ、口汚く罵倒していたことを覚えている。

もし私が優秀賞を取っていなければ、父は決して自ら進んで私を「娘」と呼ぶことはなかっただろう。

児島先生が言っていたことは正しかった。優秀賞を手にした今、出会う人々は皆親切に振る舞うようになった。

私は父の申し出を断った。心の中にはまだ何か引っかかるものがあり、彼を許すことができなかった。

過去のことをなかったことにするのは私にとって不可能だった。

19、

次に母に会ったのは、大学入学試験が終わった後のことだった。

試験の結果が発表された翌日、学年で卒業パーティーが開かれた。

洋行は市内でトップの成績を取り、東大には届かなかったものの、他の優れた大学には楽々と入学できる状態だった。

母はこの上なく喜び、彼のことを誇らしげに話していた。

「やっぱり洋行はすごいね!」

「みんなで乾杯して、洋行の卒業を祝おう!」

今日の卒業式は洋行だけのものではないはずだが、母の目には彼しか映っていないようだった。

「諸谷先生、本当にすごいですね。娘さんが東大に推薦入学し、生徒が市でトップの成績を取るなんて!」

その言葉が出ると、みんなの視線が私に集まった。

母の顔色は真っ青になり、次に真っ赤になった。

彼女は私の袖を引っ張り、小声で言った。

「何しに来たの?ここは入学試験を受けた生徒たちのためのパーティーだ。あんたは歓迎されないわ」

私は笑いながら答えた。

「諸谷先生、私が優秀賞を取ったことはお祝いしないの?それも数学の優秀賞だよ」

母の顔は青色
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