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第4話

ノックしようとした手は空中で固まった。

本当はよく分かっていた。洋行の件はきっかけではなく、ただの口実に過ぎない。

母はずっと前から私と縁を切りたかったのかもしれない。

ただ、ずっと理由がなかっただけで、今、洋行のことを口実に私という厄介者をやっと手放せる。母にとっては、私が過去の恥を思い出させる存在だったのだ。

私は箱の上にあった小さなウサギのぬいぐるみだけを持っていくことにした。

これは祖母が私にくれた、唯一のおもちゃだった。

そして、これは私の持ち物の中で唯一、中古ではなく、自分のものだった。

母が私を愛していないことはずっと前から知っていたはずなのに、この瞬間を迎えると、やはり胸が痛んだ。

私はそっと指でウサギの額を撫で、心の中で誓った。私はこのウサギを絶対に捨てたりしない。

彼女は私がこの世界で唯一の家族だ。これからも彼女だけが私のそばにいてくれるのだから。

7、

父がくれた二枚の千円札が、私の唯一の貯金だった。

私はその金を使ってホテルに泊まるのをためらい、ネットカフェで一夜を過ごすことにした。

端の席を選び、ここで一晩過ごそうとしたが、予想外にも小学校の頃の算数クラブの同級生、菊池安奈と出会った。

彼女はパソコンで数学モデリングをしていたが、途中で行き詰まっていた。

私は思わずアドバイスをしてしまった。

「清良!本当にあなたなの?清良が算数クラブを辞めた時、児島先生がすごく悲しんでたよ」

あの頃の算数クラブは、児島先生がオリンピック数学コンテストに参加する生徒のために無料で開いてくれたクラスだった。

児島先生は私を今までで一番才能のある生徒だと言ってくれたが、母は私が数学に才能を持っていることをひどく嫌っていた。

「県大会がもうすぐ始まるんだ、清良ちゃんは私今まで出会った生徒の中で一番数学に才能があるのよ!」

数学は、私の心の中で重くのしかかり、触れてはならないものになっていた。

しかし、こんな時に安奈と再会するなんて、まるで長い間埋もれていた宝物が掘り起こされたかのようだった。

その夜、私はあまりよく眠れなかった。

騒がしかったからかもしれないし、心が乱れていたせいかもしれない。

夢の中で、私は小学校時代に戻り、学校のホールで数学コンテストで一位になった賞状を受け取っていた。

児島先生は笑顔で私にお祝
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