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第14話

初陽は突然、体が硬直した。

彼は慌てた様子で言った。「君が何を言っているのか分からない......」

「もう演技はやめなさい」柚咲は無表情で言った。「初陽、認めなさいよ。あなたはずっと前からあのくずを愛していたんでしょ」

「どうしたの?くずを愛している自分が恥ずかしいの?」

「それなら教えてあげるわ——そう、確かにとても恥ずかしいことよ」

彼女は極限まで嘲笑を込めて言った。「だって、あなたが愛したのはただの偽物なんだから。

本当のことを教えてあげるわ。私はわざとだったのよ。

汐音なんてくずが長く生きられるわけないことは知ってた。彼女が手術台に上がれば、死ぬ運命なのよ。でも、私があの偽物をそのままにしておけると思う?

あの顔を見るたびに本当に吐き気がした......

病院から何度もあなたに電話がかかってきていたけど、私は全部切って、履歴も消しておいたわ。

彼女は、死ぬべきだったの」

初陽の体は止まることなく震え続け、冷たい目で彼女を見据えたまま、一言も発しなかった。

「そんな目で見ないでよ——」柚咲は冷笑しながら言った。「汐音の死には、あなたも一因があるのよ」

「身体の痛みよりも、彼女を苦しめたのは、愛している相手が彼女を人間扱いしなかったことでしょうね」

「失って初めて後悔するなんて、なんて気持ち悪いのかしら」

柚咲は冷たく笑い、「私が本気であなたと結婚したいと思ったの?あなたの家が勢力がなかったら、あなたなんか私と結婚する資格もないのに」と言った。

「あなたなんて私にとって、呼べば来て、要らなくなれば捨てるだけの犬よ」

彼女は振り返り、巻き髪をかき上げ、さっそうと背を向けた。

だが、彼女はこの扉から出ることはできなかった。

初陽はフルーツナイフを彼女の心臓に突き刺したのだ。

鮮血が噴き出し、彼の顔に飛び散った。

彼は柚咲の驚愕の目を押さえつけ、彼女の叫び声を抑えながら、少し不思議そうに顔を上げた。

「汐音、汐音......」

「どうして、君の顔が思い出せないんだろう?」
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