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第12話

この服を見つけるまで、私はほとんど忘れていた。

最初に妊娠が分かった時、私たちの間にも、わずかではあるが幸せな時間があったことを。

あの時、彼は私と一緒に買い物に出かけ、この服を選んでくれた。

彼は「女の子がいいな。おとなしくて素直な子が」と言った。

だから、私たちはピンク色を選んだのだ。

その後、子供を失い、どんなに探してもこの服は見つからなかった。

まさか、初陽が隠していたなんて思いもしなかった。

私は少し混乱した。彼がこの服を隠していた理由は何だったのだろう?

部屋には酒の匂いが充満していた。初陽は泥酔し、胃痛で倒れ込んでは、目を覚ますとまた酒を飲み続けていた。

ある時、彼は目を覚まし、胃を押さえながらぼんやりした声で私の名前を呼んだ。

「汐音、俺の胃薬を持ってきてくれ」

彼はいつも私を使用人のように呼びつける。それは柚咲に対する親しげで優しい呼び方とは全く違っていた。

だが、彼に返事をするのは、ただの静寂だった。

その時、彼は私がすでに死んでいることに気づいたのだ。

彼は医薬品を探そうと部屋中をひっくり返したが、見つけることはできなかった。

以前は、彼が少しでも体調が悪くなれば、私はすぐに薬を持ってきて、心を込めて看病したものだ。

だが、今や私はいない。彼は廃人のように地面に倒れ込み、突然、手で自分の目を覆った。

私は見間違えたかと思った。

彼の指の隙間から、光る何かが流れ落ちていた。
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