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第8話

目覚めた時、周りはまず白一色だった。そして次第にはっきりしてきた。

空気には消毒液の匂いが漂っていた。

耳元では監視モニターの機械音が規則正しく鳴っていた。

痛み、体のあちこちから痛みが伝わってきた。

私が苦労して手を上げると、傍らで伏せていた人が驚いて顔を上げた。

男の顔には隈がで来て、目の血走りが目立ち、疲れ果てた様子だった。

彼は慌てて包帯だらけの私の手を支えた。

「歌音、心配するな」

「医者が言うには、この手は神経を損傷していない。しばらく養生すれば良くなるそうだ」

私は彼を見つめ、突然目に涙が溢れてきた。

かつて私は、彼が独断で自分たちの未来を台無しにしたことを恨んでいた。

でも、再び彼を見た今、恨むことができなくなっていた。

7年で人は別人になれる。最初に彼だと気づかなかったのも無理はない。

彼は刑務所で何を経験したのだろう?

計算すると、陸野原は今年まだ29歳だ。

彼の頬は痩せこけ、余分な肉はほとんどなかった。

かつては輝いていた切れ長の目も光を失い、暗くなり、目尻には細かい皺が刻まれていた。

唇は乾いて割れ、血の気がなかった。

あの日、私の名前を聞いた時の彼の探るような目を思い出し、急に理解した。

彼も最初、人とも幽霊ともつかないような私を認識できなかったのだ。

これ以上見ていられず、涙が止まらなくなり、枕に染み込んでいった。

7年間、私は一度も彼に会いに行かなかった。

彼が出所して最初にしたことも、私に会うことではなかった。

私たちは現実から逃げ、お互いに向き合うことを恐れていた。

天が私たちの二本の糸を再び絡ませたのだ。

陸野原は乾いた咳をした。

「幸い、あの変質者をようやく捕まえることができた」

「これが出所以来、初めてまともなことをしたと言えるかもしれない」

彼は唾を飲み込み、私の心の傷に触れないよう気をつけながら話した。

「あの変質者は警戒心が強くて、あの日は郊外を3周もして、僕を振り切ろうとした」

「幸い......最後に正しい交差点を選べた」

「もう二度と会えないかと思った」

私は首を振った。

「助けてくれてありがとう」

彼の目に突然希望の光が宿った。

「歌音ちゃん、過去がどうあれ、私たちはまだ新しい人生を始められる。そうだろう?」

おそらく一緒に死の淵から生還した
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