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第4話

四国は本来亜熱帯気候だが、大晦日のこの日は珍しく雪混じりの雨が降っていた。

殺人鬼の噂はまだ収まらないものの、市民たちは緊張した雰囲気の中でつかの間の安らぎを感じていた。

夜の8時頃から、あちこちで花火が上がり始めた。

私が外出したのは10時だった。

この時間、ほとんどの人が家族団らんの食事をしている。万家灯火の中、私のために灯る明かりは一つもない。

私には直系の親族がもういない。私一人だけが残された。

冷たい風が吹き荒れ、私のコートを簡単に貫いた。

首を縮め、ポケットに隠したナイフをしっかりと握った。

今夜、けじめをつけるつもりだった。

大晦日の夜、乗客を拾うタクシーは少ない。

乗車しても車内は死のように静かで、運転手と私は終始無言だった。

車内の暖かさか、アロマの香りか、私はうとうとと眠ってしまった。

目が覚めると、車は真っ暗な路地に入っていた。

「運転手さん?この道は違うんじゃ......」

おかしいと気づいた時にはもう遅かった。急ブレーキで私の頭は座席の背もたれに強く打ち付けられた。

運転手は車を降り、後部ドアを開けて私を引きずり出そうとした。

彼の荒い大きな手が私の足首を掴み、外に引っ張り出す。

私にはまったく抵抗できなかった。

恐怖が私を包み込み、私の悲鳴が寂しい野原に響き渡った。

遠くでは色とりどりの花火が大きく咲いていた。

髪の毛を掴まれ、私は粗い砂地に押し倒された。

絶望と恐怖で、泣く暇もなく、喉から嗄れた叫び声が漏れた。

太ももは鋭い石で切り裂かれ、血が止めどなく流れ出した。

「お願い、私を放して。何でもするから」

「お願い、殺さないで......」

その変質者は手を止めなかった。私の服は引き裂かれ、肌が大きく露出した。

彼は私の顔を強く叩いた。耳鳴りがし、口の端から血が滲んだ。

慌てて林晶のために用意していたナイフを取り出したが、刺す前に奪われてしまった。

変質者はより興奮したようで、荒い息が私の首筋にかかった。

「ナイフを持ち歩いているのか?面白いな」

次の瞬間、彼は私の右手を押さえつけ、ナイフで刺し貫いた。そして引き抜いた。

激痛が走り、私は絶望的に目を閉じた......

予想していた二撃目は来なかった。

代わりに聞こえたのは鈍い音だった。

目を開けると、変質者は後ろから頭を殴られていた。

彼は激怒し、立ち上がってその人物に襲いかかった。

体つきから、あの日私を助けてくれた隣人のようだった。

全身が骨折したかのような激痛で、私には息をする力しか残っておらず、バッグから携帯を取り出す力もなかった。

ただひたすら、隣人が勝てることを祈るしかなかった。

ついに、変質者は頭を強打されて地面に倒れた。

隣人の顔には血しぶきが飛んでいた。彼は髪を上げ、思わず私を問い詰めた。

「なぜこんな遅くに一人で出かけたんだ?」

「お前が死んでしまうかもしれないって、どれだけ怖かったか分かるか?」

なぜ数日前に知り合ったばかりの人がこれほど気にかけてくれるのか......

その顔をはっきり見た瞬間、私は凍りついた。

前髪が上げられ、その顔は......かつての人によく似ていた。

陸野原、7年前に私の妹を殺した犯人だった。

血が傷口から溢れ出し、私には力が残っていなかった。

弱々しく首を振り、悲しげに笑った。

「あなたが出所したのは知っていたわ」

「わざとでしょう?私の側に潜んで、私も殺すつもりだったの?」

「じゃあ、なぜ私を助けたの?」

涙が目尻から流れ落ち、私の心は荒涼としていた。

「分かったわ。あなたが自分で手を下したかったのね」

目を閉じた。

「さあ、殺して」

返ってきたのは、風の音と私を抱き上げる腕だった。

彼は私をきつく抱きしめた。まるで私が消えてしまうのを恐れているかのように。

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