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第6話

私は習慣的に一歩後ずさりし、唇を噛んだ。

「私ではありません」

彼の困惑した目を見て、私は目を伏せてから付け加えた。

「私は彼女の姉、歌音です」

彼は丁寧な口調で言った。

「申し訳ありません。間違えてしまいました。篠田家に姉妹がいるとは知りませんでした」

私は彼を見上げることはなかったが、しばらく彼の視線が私に留まっているのを感じた。

ちょうどその時、妹が来て彼を部屋に招き入れた。

少女の柔らかな声には挑発的な響きがあった。彼女は親切心から私に注意を促した。

「お姉ちゃん、今日やらなきゃいけないこと、忘れないでね」

陸野原が妹の家庭教師を終えて出てきた時にはもう日が暮れていたが、私はまだ手元の仕事を終えていなかった。

10度ほどの寒さの中、私の薄着では骨まで染みる寒さを防ぐことはできなかった。

白い指は冷たい水に浸かって真っ赤になっていた。

彼は出てきた時に再び私を見かけ、私の惨めな姿に驚いた様子だった。

「ずっと外で花の手入れをしていたの?」

「こんなに寒いのに、どうして部屋に入って暖まらないの」

私は無理に笑顔を作り、小さな声で呟いた。

「もうすぐ終わります」

顔を上げると、彼の目と合った。その穏やかな瞳の奥に激しい波が隠れているようだった。

彼は溜息をついた。

「こんな家庭で生活するのは、辛いだろう?」

「大丈夫だよ。僕たちは同じ世界の人間だから」

この一言で、私の体は震えた。自分の耳を疑った。

「同じ世界の人間?」

彼はうなずいた。

「そう」

少年は首に巻いたマフラーを引っ張り、私に手を振った。

「また会おう」

私はこれが、私の死んだような生活の中のちょっとしたエピソードに過ぎないと思っていた......

後になって、父たちの会話から彼もまた表に出せない私生児だったことを知った。ただ、あまりにも優秀だったため、無視できなかったのだ。

私たちは本当に二度目、三度目と会うことになった。

彼は私に、自分が人より劣っていると思う必要はないと教えてくれた。他人を喜ばせるために自分を犠牲にする必要はないし、他人の感情を気にしすぎる必要もないと。

背筋を伸ばして歩くことから、人と自由に会話することまで。

彼は私が望む大学に入って、生まれ育った家庭から離れることを勧めてくれた。

19歳の年、私は希望の大学に
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