夫が元カノと一緒に検診に行っているのを目撃して

第1話

「妊娠四週目、おめでとうございます」生理が一週間遅れたので病院に検査に来たら、一ヶ月の妊娠が判明した。予期せぬ妊娠だった。診察室を出て廊下に立ち、お腹に手を当てながらぼんやりと考え込んでいた。このまま産むべきか迷っていた。私は体が弱く、もし堕ろしてしまえば、もう二度と妊娠できないかもしれない。突然、人だかりができた——「あっ、柳川女優と彼氏じゃない？お似合いのカップルね！」「毎回の検診に付き添ってくるなんて、本当に仲がいいわね」「両親があんなに素敵だと、赤ちゃんもきっと可愛いでしょうね」思わず人だかりの方を見ると、氷室恭介と柳川舞子の姿が目に入った。彼女は七年近く彼との熱愛を演出し続け、周りは二人が本当に恋人同士だと思い込んでいた。先日のバレンタインデー、私たち三人で食事に行った時に週刊誌に撮られた。ネット民から「計算高い女」「破廉恥」と散々叩かれた。誰も知らない。私こそが氷室恭介の妻なのに。その場を立ち去ろうとした。ここにいるのは、恥をかかずに済むためではない。だが、柳川が私を呼び止めた。「玲奈さん、どうしてここにいるの？まさか恭介のことをストーカーしてたの？」私がマスクとサングラスで完璧に変装していたのに、週刊誌のカメラマンには気付かれなかったのに、彼女には見破られてしまった。答える前に、氷室は眉をひそめ、私を非難した。「今回だけは許すが、二度とするな」「ストーカー」という言葉を聞いた周りの人々は、私を不審な目で見つめた。まるで不倫相手でも見るかのように。こんな状況は初めてではない。でも、何度経験しても喉に棘が刺さったような苦しさを感じる。氷室は私を擁護する気など毛頭なく、柳川を連れて採血室へと消えていった。そうだ。彼の「運命の人」が非難されないように、私が妻だという事実を明かすはずがない。おかしいことに、たった今まで本気でこの子を産むか迷っていた自分が可笑しい。こんな薄情な男の遺伝子なんて、何がいいのだろう。生まれてきた子が父親みたいな性格だったら、私の心は持たない。すぐに中絶の予約を取り、帰り道で弁護士に電話をかけた。「離婚協議書ができたらすぐに持ってきて」「でも、氷室様の不倫の証拠がまだ十分ではありません。柳川さんの羊水検査の結果で氷室様との親子関係が証...