第69話

「我々の考えは非常に単純です。この元素を研究し、世界を震撼させる最高の武器を開発し、名声を世界に轟かせることが目的でした」

「しかし、僕たちは全く予想していなかったのです。この物質が1グラムあたり50億円の価値を持ち、すべての国が欲しがるものになり、さらには我々の命を狙う原因となるなんて」

「藤原辰也もこの1グラムの軽分子のせいで命を失いました。この物質のせいで、僕も昨日、海賊に殺されかけました。僕はまだ死にたくありません。この物質はもういりません。あなたたちに渡します」

田中一郎は谷口教授の話を聞きながら、思考に沈んでいた。

彼は霧が若い女性だとは到底信じられなかった。

兼家克之はメモを取りながら、谷口教授が話し終わるとさらに質問を続けた。「軽霧はどこの出身ですか？」

「平和国の出身です」

「年齢は？」

「正確な年齢は分かりませんが、藤原辰也が言うには、彼女が最初の1ミリグラムの軽分子を開発したのは19歳の時だそうです。そしてこの分子は彼女の名前にちなんで命名されました」

「彼女の家族について何か知っていますか？」

「知りません。このような一級秘密の人物ですから、軽霧の家族でさえも、自分の子供が何をしているのか、どこで働いているのかを知らないでしょう」

「彼女の助手である藤原辰也以外に、彼女を見たことがある人はいますか？写真はありますか？」

谷口教授は淡々と笑った。「写真？そんなものは考えるだけ無駄です。藤原辰也もただの助手にすぎませんでした。彼のすべての個人情報は完全に処理されました。ましてや軽霧本人の情報など」

兼家克之はさらに尋ねた。「彼女は今どこにいるのですか？」

谷口教授は一瞬固まり、緊張した様子で兼家克之を見た。

田中一郎はその変化に気づき、身を乗り出して冷静に尋ねた。「彼女がどこにいるか知っているのか？」

谷口教授はため息をつき、悲しげな口調で語った。「彼女のような化学の天才は、この世には滅多にいません。平和国は彼女の身元情報を特級秘密にしています」

「藤原辰也の嫉妬心が強すぎて、軽霧の情報を売り渡したため、世界中が軽分子の存在を知り、そのような物質を手に入れ、そのような天才化学者を所有しようとして、利益を得ようとしたのです」

「3年前、平和国は軽霧を新しい研究所に移転させるために人を派遣しましたが、その途中で何が