第102話

一郎は不意に質問され、一瞬固まった。

しばらくしてから、彼は冷静に「この方法は効果的だな」と答えた。

その時、柔らかな声が響き、二人の間の静けさを破った。

「花は活け終わったかしら？」

声を聞き、玲奈は急いで席に戻り、道具を手にして作業を始めた。「お母さん、もうすぐ終わります」

彩花が入ってきて見回すと、一瓶も活け終わっておらず、床にはまだ花瓶が残っていたのに気付いた。

彩花は不思議そうに一郎を見て言った。「一郎、さっきは手伝いに来るって言ってたのに......」

一郎はすぐに母の肩を抱き寄せ、少し大きめの声で彼女の言葉を遮った。「お母さん、先に帰って休んでください。こっちは僕たちに任せて」

一郎は無理やり彩花を外へ送り出し、戻ってきた時には、玲奈が真剣に花を活けていたのを見た。

彼はハサミを取り、玲奈の向かいに座り、彼女の花を活ける手つきを観察しながら、黙って一緒に作業を始めた。

時は、静かで温かな隙間にゆっくりと流れていった。←意味が良く伝わらない

騒がしさも、喧騒もなく、静かで清らかな香りが漂い、平穏な時間が流れているようだった。

玲奈がふと顔を上げると、一郎が独りで活けた花瓶を見つけ、思わず口元が緩んだ。

同じ色の真紅のバラが、きっちりと整列し、まるで兵士の行進のように整然と並んでいた。

男の美的センスは致命的だった。

一郎は彼女が微笑んでいたのを見て、少し気分が良くなった。「そんなに変か？」

玲奈は手元の作業を続けながら、「お母さんが、これがあなたの作品だと知ったら、きっと喜ぶと思いますよ」

一郎は彼女を見上げ、「君はどう思う？」

玲奈は頷いた。「ええ、素敵です」

一郎は彼女の赤らんだ顔をじっと見つめた。

確かに、素敵だ。

彼は生まれて初めて、花を活けることが無駄でも退屈でもないと感じた。

夜になり、夕食が終わった後。

一郎は部屋に戻り、シャワーを浴び、灰色のカジュアルな服を着てバルコニーに立ち、欄干に手をついて空を見上げていた。

思ったより、この場所の星も輝いていた。

その時、ドアが開く音がした。玲奈が部屋に入り、ドアを閉めたまま立ち止まった。

一郎はバルコニーからその音を聞き、玲奈に向き直った。

部屋は少し広く、二人の間には距離があったが、互いの表情ははっきりと見えていた。

その時、玲奈は少し落ち