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第2話

田中一郎は自分の国を守るため、インベーダーを追い払いながら血の海を渡り戦っていた。彼の顔に恐れなどなかった。

山本大和は心の中で思った。田中一郎は中東の内戦に参加した経験のある強者で、国を救うために戦った英雄だった。彼は最も残酷な戦場で生き残った王者なのだ。

目の前にいるこの弱い女性が、田中一郎の妻だなんて…...

彼は気にも留めずに慰めるように言った。「心配いらないよ。田中一郎がどんな人か知っているだろう?彼は権勢が非常に高く、その名前を聞いただけで人を震え上がらせる人物だった。彼の妻を誘拐するなんて誰ができるんだ?俺の知る限り、田中一郎はまだ結婚していない。たぶん同姓同名の誰かだ。彼女の夫に連絡を取り続けて、4億円を用意してもらうんだ」

その男たちは引き続き田中一郎に連絡を取った。

渡辺玲奈は心が折れたように壁の隅に座り込み、絶望的に目を閉じた。

どれほどの時間が過ぎたのかはわからなかった。

突然、耳をつんざくような爆音が響いた。

「ドーン!」爆発音は地面を揺るがすほどの激しさだった。

渡辺玲奈は身が震え、目を開けた。

部屋の中で身代金を待ちながらトランプをしていた男たちは、すっかり動揺していた。

外の手下が慌てて叫んだ。「ボス、大変です。門が爆破されました!」

「爆破された?」山本大和は驚いて叫んだ。「誰がやったんだ?」

「それは…...軍戦グループの人たちです。巨大な隊列が私たちのテクノロジーパーク全体を包囲しています」手下は空を指差しながら震えた声で言った。「さらに、2機の戦闘ヘリコプターも…...」

「国際戦争に参加したことのある軍戦グループなのか?俺たちはもう終わりだ…...」

その時、山本大和は渡辺玲奈の細い身体を引きずり起こし、顔を歪めて怒鳴った。「お前の夫は本当に軍戦グループの首領、田中一郎なのか?」

渡辺玲奈は無力にうなずいた。

山本大和は一瞬で後悔し、彼女を人質に取って外へと向かった。

テクノロジーセンターの外で。

数十台の装甲車が、きちんと整列してこの場所を包囲していた。

百人以上の厳粛で屈強な武装した兵士が最新の武器を持ち、黒い野戦の軍装を身にまとい、規律正しくその場で待機していた。

空には2機の戦闘ヘリコプターが旋回し、狙撃手が機内から狙撃銃で目標を狙っていた。

この壮大な光景に威圧され、何人かは武器を捨て、両手を頭の上に乗せてひざまずき、動くことができなかった。

山本大和は渡辺玲奈を人質に取り、「俺を逃がせ、さもなければ彼女を撃ち殺すぞ!」と叫んだ。

その時、遠くの車の後部ドアが開いた。

一人の堂々たる男性がゆっくりと歩いて出てきた。

男性は顔立ちが端正で、眉が剣のように鋭く、目が星のように輝いていた。彼の身長は高く、体格ががっしりとしており、黒い軍戦服が彼の凛々しい姿をさらに引き立てていた。

彼の全身は絶対的な冷たさに包まれており、その強大なオーラは人々を震え上がらせた。

目の前の男性を見て、渡辺玲奈は瞳が熱く、心臓がドキドキと速く鼓動した。

本当に田中一郎だ!

鋭い鷹のような目をしている田中一郎が、冷たい氷窖から響くような声で、周囲を震えあがせるように言った。「彼女を放せ」

山本大和は顔が真っ青になり、震えながら言った。「田中様、私は…...私は彼女があなたの妻だとは本当に知らなかったのです。どうか、どうか私を放してください。そうすれば彼女を放します」

田中一郎の深い黒い瞳は冷たく恐ろしかった。

彼の視線は最初から最後まで渡辺玲奈には向けられなかった。

彼はゆっくりと拳銃を持ち上げ、山本大和を狙い、地獄から這い出たような冷たい声で言った。「彼女が死んだらお前も一緒に死ぬんだぞ。七発の弾丸でお前を蜂の巣にするには十分だ」

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