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第105話

「みんなに言いたいんだけど、今回は十か国以上を回ってきたの。本当に素晴らしかったわ!」

声が騒がしく、賑やかだった。

一人の女性の声なのに、まるで市場にいるかのように感じた。その女性は止めどなく話し続けていた。←日本なら市場をスーパーにしてもいいかもしれない

玲奈は少し緊張しながら、その場に歩み寄った。

ソファに座っていた一郎は玲奈を見て、隣に座るように手招きした。

玲奈は一郎に気にかけてもらっているような錯覚を抱いた。

彼の隣に座ると、向かいには見知らぬ若い女性が座っていたのに気づいた。

その若い女性は品があり、清楚で美しい容姿をしており、じっと玲奈を見つめていた。

玲奈が座ってから数分が経ったが、家族全員がずっと五十代のその女性の話を黙って聞いていた。

その中年女性はややふっくらした体型で、宝石を身に着けた。喋ることが非常に騒がしく、絶え間なく続くため、誰も口を挟めなかった。

ようやく女性が話を終え、テーブルの水を一口飲んだ時、突然一郎の隣に座っていた玲奈に気づき、目を大きく見開き、何かが違うことに気づいた。

一郎が紹介する前に、その女性は玲奈の存在を無視するかのように、自分の隣にいた若い女性の紹介を始めた。

「こちらは千早家の長女、千早月咲。私の養女であり、一郎のために選んだお嫁さんだよ」

玲奈はその言葉を聞いた瞬間、心がぎゅっと締め付けられた。

他の家族は特に驚くこともなく、平然としていた。

「千早家は皆さんご存じでしょう?不動産業界のトップで、名家中の名家だよ。そして我が家の月咲はね、優しくて思いやりがあって、しっかり者。名門大学を卒業していて、趣味も多彩、家庭でも社交でも素晴らしい女性だよ。それに、千佳なんかよりも何倍も優秀だわ」

「一郎、今回は叔母さんが選んだお嫁さんに満足しているかしら?」

ようやく一郎が話す機会を得た。

彼は片手をソファの背にかけて玲奈の方へ少し体を傾け、「叔母さん、僕の妻を紹介しますね。こちらが玲奈です」

田中風音の顔色が一瞬で変わり、冷たい目を向けた。

一郎は玲奈を見て、慎重に紹介した。「玲奈ちゃん、こちらは叔母さんです。僕の父の妹です」

玲奈は立ち上がって、礼儀正しくお辞儀をした。「叔母さん、こんにちは」

風音は鼻を鳴らして、腕を組んで玲奈を上から下までじろじろと見て、軽蔑したように
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