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第73話

国境、軍戦グループの本部。

車列は次々と堅固な武器生産基地に入り、そびえ立つ豪華なビルの前に停まった。

渡辺玲奈は以前ここに来たことがなかったので、車から降りて田中一郎の後ろについてビルに入り、エレベーターで最上階へと直行した。

広々とした会議室。

様々な制服を着た数十人が整然と田中一郎に一礼し、「田中様、こんにちは」と挨拶をした。

渡辺玲奈は一瞬驚いた。

そこには男性も女性もおり、白衣を着た者、軍服の者、技術者の服を着た者などがいた。

初めて見る制服も多かった。

おそらく十数部門のリーダーが集まったのだろう。

田中一郎は威厳を保ち、冷静に主席の席に座った。

常盤太郎が渡辺玲奈を隣の休憩室に案内し、お茶を差し出した。「奥様、田中様は急な会議があるので、ここで少し休んでください」

渡辺玲奈は頷いて応じた。「分かりました」

常盤太郎が去った後、渡辺玲奈はしばらくスマホを見ていた。

しかし、ふと考えた。自分はなぜここで田中一郎を待っているのだろうか?

彼が終わるのを待って、なんの意味があるのだろうか?

渡辺玲奈はお腹が空いてきたので、下の階に降りてビルを出た。

夕陽が沈み、薄暗くなり始めた。

渡辺玲奈は少し疲れを感じ、お腹もますます空いてきた。

以前一度訪れたことはあったが、このキャンプ地はまるで小さな町のように広く、彼女は迷子になってしまった。

気が付くと、バスケットボールコートがある小さな公園にたどり着いていた。

歩けば歩くほど、何かがおかしいと感じた。春の風が吹き、少しひんやりとした冷たさを感じた。

渡辺玲奈は携帯を取り出し、田中一郎の番号を探したが、彼が重要な会議に出ていることを思い出し、彼に道を尋ねるのはやめた。

突然、不気味なサササという音が聞こえてきた。

渡辺玲奈は驚いて身震いし、緊張して後ろを振り返った。

薄暗い中、茂った緑の中以外には何も見えなかった。

これ以上進んではいけないと感じた渡辺玲奈は、来た道を引き返した。

突然、大木の幹の後ろから黒い影が飛び出し、渡辺玲奈に向かって襲いかかった。

「キャッ!」渡辺玲奈は叫び声を上げ、黒い影の姿が全く見えないまま、相手の強い力で地面に押し倒された。

彼女は地面に倒れ、力強く押さえつけられ、突然鋭いナイフが心臓に向かって刺さろうとした。

「助けて……」渡辺
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