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第46話

数日後、オフィスで。

兼家克之は調査結果を田中一郎に報告した。

「田中様、山口拓海が動画を投稿していたアカウントは平和国のある孤児院の公式アカウントで登録されており、ライブ配信などの収益はすべてこの孤児院の口座に直接振り込まれているそうです。院長は山口拓海本人に会ったことがないと言っています」

「山口拓海の作品の販売ルートも非常に特別で、彼女はオンラインで直接価格を設定しオークション形式で販売しており、収益は異なる地域の孤児院や慈善団体の口座に振り込まれています。収益は一切山口拓海の手を通りません」

「彼女には運営する会社やチームがなく、ライブ配信中も話さず、ただ黙々と絵を描いています」

「三年前、このアカウントは更新を停止し、山口拓海という人物もまるで蒸発したかのように姿を消しました」

田中一郎は椅子にもたれかかり、目を閉じて兼家克之の報告を静かに聞きながら、心の中で渡辺玲奈のことを考えていた。

彼は、本当に想像もしなかった。こんなに普通の女性が、まさか謎に包まれた背景を持っていたとは。

しばらくして、田中一郎は低く落ち着いた声で静かに言った。「兼家克之、車を用意しろ」

兼家克之が尋ねた。「田中様、どちらへ行かれるのですか?」

田中一郎は数秒間沈黙し、少し柔らかい声で答えた。「渡辺玲奈に会いに行く」

——

名古屋の歩行者天国。

夕焼けが消え、街灯が点り始め、人通りがますます増えてきた。

渡辺玲奈はいつものように、角の一隅で花を売っていた。

彼女は小さな露店を温かくロマンチックに整えていて、とても美しい雰囲気を醸し出していた。

時々、小さな取引が一つか二つ入ることもあった。

「おい、久しぶりだな」

渡辺玲奈が忙しくしている最中、突然耳に刺さる男の声が聞こえた。

彼女は顔を上げ、その目は一瞬で冷たくなった。ゆっくりと手にしていたバラの花を置き、傍らのハサミを手に取った。

渡辺直歩は緊張して喉をゴクリと鳴らし、一歩後退しながら、愛想笑いを浮かべておどけるように言った。「おい、もうそろそろ機嫌直せよ。前に俺の足を折ったんだぞ、今でもまともに歩けないんだ」

渡辺玲奈は全く表情を変えずに怒って尋ねた。「何しに来たの?」

渡辺直歩「母さんが病気なんだ、お前は……」

また金の無心か?

渡辺玲奈は彼の言葉を遮った。「彼女から電話で金
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