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第21話

1時間の車の旅。

田中一郎は渡辺玲奈をシングウの門前まで連れてきた。

シングウは混沌国の重要人物が住む別荘地だった。

例えば、混沌国の指導者、将軍、官僚、科学者、エンジニア、宇宙飛行士、または秘密裏に保護されている重要な人物などが住んでいる場所だった。

田中一郎は車を止め、渡辺玲奈に「先に車から降りろ」と言った。

渡辺玲奈は一瞬戸惑いながらも、立派な門に掲げられた「シングウ」という文字を見て、田中一郎が連れてきた場所が一般人では一生入れないところだと気づいた。

渡辺玲奈は緊張しながら、シートベルトを外して車から降り、田中一郎の隣に立った。

その時、二人の兵士が歩み寄った。田中一郎から渡された身分証を受け取り、一瞥した後、敬礼して「田中様、お疲れ様です」と言った。

田中一郎は軽く頷いた。

兵士はハイテクスキャンナーを取り出し、車両の安全検査を行った。

検査が終わると、兵士は「田中様、どうぞお入りください」と促した。

田中一郎は兵士に「彼女はこれから中に住むから、情報を登録してくれ」と言った。

渡辺玲奈は少し慌てて断ろうとし、手を振りながら言った。「そんな、迷惑をかけるつもりは……」

話が終わらないうちに、兵士はすでに機械を彼女の前に差し出していた。「指紋と虹彩認証を登録していただければ、今後の出入りが便利になります」

渡辺玲奈は断る暇もなく、兵士の指示に従って操作をし、システムに情報を登録した。

彼女は少し困惑しながら再び田中一郎の車に戻り、彼と一緒にシングウの中へ入った。

車が進む中、渡辺玲奈の心は不安でいっぱいだった。

車は約10分ほど走り、二階建ての独立した別荘、ナンエンに到着した。

ここにも門を守る兵士がいた。

車は客間に入った。

渡辺玲奈は周囲を見回した。田中家のような豪華な場所ではなくても、広々とした優雅な雰囲気があった。客間のテレビが置かれている場所には本棚が並んでおり、一面の壁に千冊以上の様々な書籍が収納されていたのが見えた。

本の香りが漂い、知的な雰囲気が漂っていた。

渡辺玲奈はこのインテリアがとても気に入った。

渡辺玲奈がこの快適な環境に浸っていた時、田中一郎が突然言った。「僕と千佳の部屋は二階だ。一階にはいくつか客室があるから、好きな部屋を選べ」

彼は以前、渡辺玲奈に夫婦として接すると約束した。

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