第22話

目を閉じて深呼吸し、この痛みを和らげようとした。

でも、あまりにも心が痛かった。

その痛みで渡辺玲奈は自分が涙を浮かべていることに気づかなかった。

翌朝。

渡辺玲奈は起きて、身支度を整えた後に部屋を出た。

リビングのソファに何人かの大物が座っていたのを見て、彼女はその場で立ち尽くしてしまった。

彼らは国家の大事について話していたが、渡辺玲奈の出現で話が中断された。

皆が好奇心を抱きながら、渡辺玲奈を見つめた。

田中一郎は立ち上がり、丁寧に紹介した。「大統領閣下、こちらが僕の妻の渡辺玲奈です」

混沌国の大統領はとても親しみやすい五十代の中年男性で、眉が曲がり、笑みを浮かべていた。その顔はとても温和だった。

渡辺玲奈は、田中一郎が自分の身分をこうして堂々と紹介するとは思わなかった。大統領の前では何も隠したくないのだろう。

彼女は緊張し、自然と湧き上がる敬意が胸に満ち、歩み寄って礼儀正しくお辞儀をした。「大統領閣下、おはようございます。皆様、おはようございます」

「奥様、おはようございます」混沌国の大統領が彼女に手を差し出した。

渡辺玲奈は驚き、すぐに両手で相手の手を握った。

大統領はにこやかに言った。「以前、娘が田中一郎将軍に好かれなかったのはなぜかと不思議に思っていました。しかし、こうして実際に奥様の美しさを見てみると、僕の娘が確かに劣っていたのだと納得しました」

田中一郎の目には冷ややかな光が宿り、渡辺玲奈を見つめた。

彼は以前から、この女性が整形が非常に自然で、まるで生まれつきの美しさのように見えることに気づいていた。その美しさには一種の憂いと深みがあり、まるで知性と優雅さを兼ね備えた女性のようだった。柔和で、しなやかで、美しく、そして生き生きとしていた。

整形の痕跡は全く見当たらなかった。

渡辺玲奈は気まずそうに微笑み、謙虚に礼儀正しく言った。「大統領閣下、お褒めいただきありがとうございます。私のような庶民が大統領のご令嬢と比較されるなんて、とても恐れ多いことです」

何人かの大物たちが顔を見合わせて微笑んだ。

渡辺玲奈はテーブルの上に「シンムキカク」と書かれた資料があるのを見つけたが、お茶やお菓子は見当たらなかった。

田中一郎のような真面目な男性は、会うとすぐに仕事の話を始めてしまうため、客にお茶を出すのを忘れてしまった