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第13話

番外編(深澤修二)

俺が中学一年生の頃、父はある大企業の社長の娘のために、母と離婚しようとあらゆる手を尽くした。

そのために、母に不倫や浮気などの汚名を無理やり着せ、母は噂に耐えきれず、自殺未遂にまで追い込まれた。

俺がそれに気づいたときには、すでに遅く、命は救えたものの、母には重い後遺症が残った。

絶望に沈む母を見ながら、幼い自分が無力でたまらなく憎かった。

その後、俺はこっそりと外祖父母に連絡を取った。

二人の祖父母はすぐさま夜通し列車に乗り、俺と母を迎えに来てくれた。

家からおよそ二千キロ離れた安木市から、全く見知らぬ都市である港川市に移り住むことになった。

そこでの生活は、まるで自分が異物であるかのように感じられた。

すべての力を勉強に費やし、疲れ果てて他のことを考えないようにすることだけが、心の中でいつでも噴き出しそうな虚無と苦しみを押さえる手段だった。

そんなある日、小柄でツインテールの江村結衣という名の女の子が、無邪気で明るく俺の灰色の心を照らし出した。

彼女はいつも俺のそばにいて、屈託のない笑顔で話しかけてくれた。

放課後にはこっそりついてきて、文房具や日用品を理由をつけてくれたり、朝食やお小遣いを学校の「ご褒美」としてそっと差し出してくれたりした。

俺のプライドを傷つけないように、それらをすべて黙ってやってくれていた。

彼女は知らなかったが、実は俺はすべて知っていた。

彼女の笑顔が、どれだけ美しく、どれほど輝いていたか。

その笑顔は、まるで夏の生い茂る茨のように、俺の心を包み込み、痛みすら感じるほどの渇望をかき立てていった。

ところが、俺がその小さなバカが告白してくるのを待ち焦がれていた矢先、彼女は急に俺から距離を置き始めた。

彼女が俺のそばにいなくなり、他の人と笑い合っている姿を見るたびに、どれだけ怒りを感じていたか、彼女は知らないだろう。

自分に「ゆっくり行こう、怖がらせるな」と言い聞かせていた。

ある日の放課後、彼女が他の男の子とふざけ合っているのを見て、俺の中で張り詰めていた理性の糸がプツンと切れた。

俺は彼女を無理やり引き寄せ、その小さな体を抱きしめながら、静かに安堵の息を漏らした。

ずっと空虚だった心が、その瞬間にやっと満たされた気がした。

そして、俺の緊張した、震えた声が自分の耳に届いた。
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