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第6話

その後、修二は私を心の底から甘やかしてくれた。

毎日どんな天気でも、遠回りをしてまで私を家まで送ってくれた。

毎朝、私のマンションの前で早くから待って、一緒に学校へ行く。

食事の時は、私が嫌いな料理を全て自分の皿に移し、私の好きなものだけを残してくれた。

私がクッキーが好きだと言うと、それだけで何日も研究して、ついに色も香りも味も完璧なクッキーを作り上げてくれた。休みの日には毎回、私のためにそのクッキーを作って持ってきてくれた。

私が芸術科に進んでからは、毎日各教科のノートを整理して、私のために特別に学習時間を空けて教えてくれた。

高二の年、私に特別な誕生日プレゼントを贈るために、彼は週末や夏冬休みの間、昼も夜もアルバイトに励んでいた。

痩せこけて顔つきまで変わってしまった修二を見て、涙が止まらなかった。

「私、そんな貴重なプレゼントなんていらない!あなたに元気で、幸せでいてほしいだけ!」

修二は優しく私を抱きしめた。

「結衣ちゃん、君さえいてくれれば、僕はいつでも元気で幸せだよ」と微笑んで言った。

……

突然、けたたましい電話の音が夢の中から私を呼び覚ました。

半分寝ぼけた状態で、修二の低くて魅力的な声が聞こえた気がした。

「結衣、お前はどこにいる?」

修二の口からこんな冷たい名前が呼ばれるのを聞いて、私はまだ過去の自分に浸っていたため、口を尖らせて不満げに返した。「修二、結衣ちゃんって呼んでよ!」

しばらく沈黙が続いたあと、彼の声が再び聞こえてきた。

「結衣、お前はまた……」

その先の言葉はよく聞き取れなかった。

なんだか胸の中が急に乾いたようで、無性に彼が作ってくれたクッキーが食べたくなった。

だから、私はそっと囁いた。

「——修二、あなたのクッキーが食べたい」

そして、握りきれなかったスマホが私の指から滑り落ち、カラリと床に落ちた。

私の意識は再び暗闇へと戻っていった。

ただ、今回ばかりは、楽しかった過去も、冷酷な現実に引き戻されるせいか、もう二度と夢の中には現れないかもしれない。

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