共有

第2話

私はぼんやりと時計を見つめ、時刻が夜の八時半になっていることに気づいた。その瞬間、ある人物が修二の行方を知っているかもしれないと思い出した。

スマホを開き、白川雪奈のインスタグラムを確認する。

案の定、またコメントのない投稿が一つ。

「今日も愛しの彼と映画デート!」

下には、二人が指を絡ませた写真が添えられている。

その男のすらりとした、骨ばった手を見つめると、なぜか心の中に安堵感が広がっていく。

それは修二の手だった。

彼の手の甲には私がつけた浅い傷跡があるからだ。

私たちが付き合い始めたばかりの頃、あるケンカの最中に私が腹立ちまぎれに思いっきり噛みついた跡だ。

当時、両親に愛され甘やかされていた私は、天真爛漫なお嬢様そのもので、怒りのあまり、加減もわからず彼の手の皮をかなり剥いでしまった。

口の中に血の味が広がった瞬間、頭が真っ白になった。

どうしていいか分からず、気づくと大粒の涙が次々とこぼれ落ちていた。

この時、私は修二がきっと激怒するに違いない、絶対に別れると言われると覚悟していた。

後悔と罪悪感、そして恐怖の入り混じった気持ちに堪えきれず、私は顔をしかめて号泣してしまった。

けれど、次の瞬間、広くてしっかりした腕に包まれた。

「ばかだな、結衣、俺は噛まれたのに、なんでお前が泣いてるんだ?」

彼は顔を下げて、けがをしていない方の手で、そっと私の涙を拭ってくれた。

「俺の方が悪かった、ごめんな。結衣を怒らせるなんて、俺が悪いんだ。ほら、もう噛んだんだから、この悪い彼氏を許してくれよ?」

あの時、まだ少年だった修二は、手当もせずに泣きじゃくる私を静かに慰め続けた。

私のすべての不安と悲しみを少しずつ消し去ってくれた。

私は涙でぼやける目で、修二の顔をじっと見つめた。

私だけの唯一無二の印をつけた、と優しく笑うその少年の姿が、少しずつ深く、消えない形で私の心に刻み込まれていった。

でも今、その私の印がある修二の手は、別の女性としっかりと手をつないでいる。

彼女と指を絡ませて一緒に散歩をし、食事をし、映画を見て、さらには彼女の手を握りながら最も親密な恋人同士の行為に浸っている。

悲しむべきでないとわかっている。

でも、私はまだ生きた人間で、鮮やかに鼓動する心臓は、どうしようもなく締めつけられてしまう。

心が締めつけられるのをこらえながら、冷静にスクロールし続ける。

この数ヶ月の間、雪奈は2、3日に一度、彼との幸せそうなエピソードを投稿しているが、ほとんどコメントはない。

彼女が私を友達に追加したときの奇妙な言葉を思い出し、これが「私だけに見せる」ための意図的な投稿であることがわかった。

修二のそばで最も長く過ごしているこの女性は、どうやら彼の中で特別な存在であるらしい。

以前は、彼が女性を家に連れてくるのはただの遊びか、私を辱めるための道具でしかなかった。

しかし、この数ヶ月で彼は雪奈のために家に帰らないことが増え、私への復讐にも関心が薄れていった。

彼はかつて私を甘やかしてくれたように、雪奈の生活のすべてに気を配り、関心を持つようになった。

修二はかつて、彼の雪奈は天真爛漫で明るく、優しくて、金や名声には無関心な、私とは全く違う女性だと口にしたことがある。

今になって、確かに彼女は違う。

その女性が本当に善良で名誉や金銭に興味がないかどうかは、もうどうでもいいことだ。

修二が雪奈だと思っているのなら、それで構わない。

もう私は何も説明したくない。

彼が誰を愛していようが、その女性がどんな人であろうが、私には関係のないことだ。

私は鍵付きの引き出しから、彼が昔アルバイトで稼いだお金で買ってくれた限定版の可愛い日記帳を取り出した。

最新のページに進み、今日修二が使った分の「機会」を記していく。

「10月13日夜

96回目:結婚記念日に料理を作ったが、彼は帰らず、別の女性と映画を見ていた」

修二、私は言ったことがある、私はあなたを愛して何もかも捨てられると。

だから私はあなたに100回、私を傷つけるチャンスを与える。もし本当に100回目に到達したら、その時は永遠にあなたの世界から去ると。

「もうすぐ」

あと少しでカウントが終わる数字を見つめ、自分にそっとつぶやく。

本当にもうすぐ終わりだ。

私と修二の絡み合うすべてが、あるいは、私の終わりが。

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status