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第4話

弟はまだ解剖実習に入ったばかりで、こんな現場を見たのは初めてだ。

彼は胃の中で何かがひっくり返るのを感じ、耐えきれずに吐き出した。

「うぅ......うぇぇっ!」

誰も彼を責めることはできない。遺体のあまりの酷さに、私自身も驚きを隠せなかったからだ。

そして、誰もこのバラバラの遺体が私だとは気づかない。

遺体安置所には、真っ白な骨とバラバラに散らばった髪の毛があって、それだけでも十分に恐ろしい光景だった。

若い警官たちも、長く直視することができず、すぐに目を逸らす。

だが、これはまだ始まりに過ぎない。

頭も四肢も臓器もない。残っているのは、破れた皮膚と肉片だけ。

凌遅刑によって殺された私は、こうしてまるで泥のように無造作に転がっていた。

母さんは照明の下で、辛抱強く遺体の縫合を進めていく。

欠けた身体を、一つひとつ丁寧に縫い合わせていき、ようやく人間の形が見えてきた。

近くにいた警官たちが感心したように言う。

「さすが桜井さんだ......度胸が違う」

その一方で、弟はすでに吐くものもなくなり、空っぽの胃袋から酸っぱい液体を吐き続けていた。

突然、母さんが眉をひそめて、何かに気づいた。

「これは......」

小さな腕に沿って伸びる蛇のような茶色いあざ。それが手首から指先まで続いていた。

母さんはそのあざをよく知っている。それは私にあるものと同じだった。

なぜか、母さんは胸騒ぎを覚えた。

彼女は手袋を脱ぎ、深く息を吐いて気持ちを落ち着かせようとした。

「まさか......そんなはずはない」

世の中にこんな偶然があるわけがないと、母さんは自分に言い聞かせる。

だが、残念なことに、今もなお遺体の頭部は見つかっていなかった。

「犯人の手口から見て、これは複数回にわたる犯行だと思われます。精神的に病んだ、猟奇心を持つ男でしょう」

「他にもまだ、被害者がいるんじゃないか?」

警官たちが推測する。

「いえ、このケースは特例です。他に発見されたものはありません」

「最終的にはDNA鑑定に頼るしかないですね、身元の確認には」

警察は、母さんと弟に「気をつけてください」と注意を促す。

なんといっても、恐ろしい殺人現場は、隣の家だったのだから。

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