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第17話

その後、母さんは毎日狂ったように独り言を繰り返すようになった。

私が幼い頃の話を空中に向かって語り、そして謝罪を口にする。

「笑美は5歳の時に、初めて母さんにご飯を作ってくれたんだよね。あの時は、私まだ笑美に腹を立てていたけど、今思えば、あれが一番おいしいご飯だったわ。

笑美の担任も、何度も私のところに来てくれた。笑美はいつもクラスのリーダーで、毎年優秀生徒に選ばれていたって。

もし笑美が生きていたら、きっと私たち家族は幸せに暮らしていたのに......」

以前はこんなこと、全く気にも留めなかったはずなのに。

今さら大事に思うなんて、遅すぎるよね。

葬式が終わると、警察は全ての証拠を検察に提出した。

そして、江川安仁の裁判が開かれることになり、二日後には判決が言い渡される。

事件の詳細が少しずつネットに広がり、凌遅刑の恐怖が知られるようになった。

この事件を知った人々は、みんな激怒していた。

誰もが、「桜井笑美」という少女が、悪魔に引き裂かれたことを知ったのだ。

安仁は、間違いなく死刑に値する。

ついに裁判の日がやってきた。

法廷には、裁判官や検察官、そして他の被害者たちの家族も出席していた。

最終的に安仁は死刑判決を受け、執行は4日後に決定した。

しかし、彼はそれに納得せず、その場で不服を唱え、挑発的に母さんを睨んだ。

「お前を殺してやる!

このクズ野郎!地獄へ堕ちろ!」

母さんは怒りに燃え、どこからかナイフを手に取り、安仁に向かって突進した。

その一刺し一刺しは、全て本気だった。

彼女は安仁の血が自分に飛び散るのも気にせず、ただ彼に死を与えようとしていた。

しかし、一人の命を奪ったところで、別の命が戻ることは決してない。

「うわああ、殺人だ!」

法廷内はパニックに陥り、他の人々は恐怖で叫びながら逃げ惑った。

裁判の進行は当然中断され、法廷は混乱の渦に巻き込まれた。

人が狂気に走れば、何もかもがどうでもよくなるのだ。
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