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第11話

彼らの様子を見て、佐藤も辛そうな表情を浮かべていた。

誰も、被害者が同僚の娘だとは思ってもみなかった。

佐藤が何度も母さんと弟をなだめて、ようやく二人の争いは落ち着いた。

そして、佐藤は母さんに尋ねた。

「笑美さんが事件に遭った日、何か特別な異常はありましたか?」

その言葉を聞いた瞬間、母さんの頭にあの日のことがよぎり、ゾッとした。

そう、あの時の私の電話は本物だったのだ。

「母さん、痛い......助けて!」

私は死にかけながら、母さんに必死で電話をかけた。

もし、あの時少しでも私を気にかけてくれたなら、私はまだ生きていたかもしれない。

だけど、皮肉なことに、母さんは私を罵り続けた。

「くだらない子!またスマホで変なことしてるのね!

まったく、また何か企んでるに決まってるわ。

お姉ちゃんは嘘ばっかりつくんだから、ほっとけばいいのよ」

母さんは壁にもたれ、顔を両手で覆いながら泣き崩れた。

「笑美......母さん、いったい何をしてしまったの......

どうしてこんなことに......」

私はその光景を上から見下ろしながら、呆れて笑いたくなった。

生きている時には、私を見向きもしなかったくせに。

死んでからは、こうして涙を流す。なんて滑稽なことだろう。

佐藤は、母さんの情緒不安定な様子を見て、それ以上の質問を控えた。

弟は悪態をつきながら、そのまま一人で帰っていった。

彼はこの出来事をまったく気にしていなかった。母さんがただ狂っているだけだと思っていたのだ。

残された母さんは、遺体安置所で一人謝り続けた。

「笑美、ごめんなさい......母さん、本当に知らなかったのよ......」

彼女は嗚咽を漏らし、涙で顔をくしゃくしゃにしていた。

声は震え、まともに話すこともできないほどだ。

私は、その姿を見ながら皮肉な笑みを浮かべた。

ああ、もし私が声を出せるなら、こんな虚偽に満ちた母さんの顔を叩きたい。

そして、私が受けてきた数々の屈辱を語りたかった。

彼女は私を生んだだけで、育てた覚えなんて一切ない。

与えられたのは、苦しみと傷だけだった。

でも、まさか彼らがこんな形で報いを受けるとは思ってもみなかった。
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