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第255話

渐々酸欠の状態となり、意識が次第にぼんやりしていった。

ただ、苦しい......本当に苦しい......

死にたいくらいに。

もう江川宏とは何の関係も持ちたくないと思っていたのに、この状況で思い浮かぶのは彼だけだった。

江川宏......

もうすぐ来るよね......

助けて......

意識を失いかけた瞬間、突然頭の上に冷たい水がぶっかけられた。

地下室には冷たい風が吹き込んでいて、その冷水で少し目が覚めたが、体は震えるほど寒くなった。

冷たい水が顔を伝い、首筋や衣服の中にまで流れ込んできた。

骨まで染みる寒さだった。

ぼんやりと目を上げると、隣の柱に藤原星華が縛られているのが見えた。

彼女の顔には二つの平手打ちの跡があり、服も汚れていて、かなりみすぼらしい姿だった。

しかし、彼女は椅子に足を乗せ、悠然とした態度を崩さなかった。

私は冷ややかに笑い、少し弱々しい声で言った。「どうやら、お前も演技派ね」

「演技がどうだって関係あるの?」

藤原星華は自信満々に答えた。「知っておけばいいのは、彼が誰を選ぶかってことだけよ!」

その時、外から車のエンジン音が聞こえてきた。

藤原星華は足下の椅子を蹴り飛ばし、私に一瞥を投げかけてから、高慢な態度で言った。「清水南、私を恨まないでね。恨むなら、自分の身分が低すぎることを恨みなさい。ただ私に弄ばれるだけなんだから」

すぐに、見慣れた姿が逆光の中から現れた。背筋がピンと伸び、朝に見たあの手作りのスーツ姿のままだった。

彼の視線はすぐに私に注がれ、その瞳がわずかに縮む。次の瞬間、数メートル先で彼の進行を阻む者が現れた。

金沢世之介は笑いながら葉巻に火をつけた。「江川社長、一度お目にかかるのは本当に難しいことだね」

江川宏は冷たい表情を浮かべ、鋭い目で彼を睨みつけた。「放せ」

「今日ね、本当は江川奥さんを使ってあなたと取引をしようと思ってたんだけどね」

金沢世之介は椅子に腰掛けながら言った。「ところが、手下が突然、藤原家のお嬢さんもあなたと親しくしてると報告してきてね。どっちを捕まえるべきか迷ったもんだから、二人とも連れてきたよ」

「条件は何だ?」

江川宏はあまりに無愛想に尋ねた。

金沢世之介は大笑いしながら言った。「もうね、条件なんてどうでもいいんだよ。今はただ江川社長が....
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