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第256話

「3......」

江川宏の周りの気圧が急に低下し、彼はしっかりと銃を構え、藤原星華に向けた。

藤原星華は必死に首を振りながら、叫んだ。「やめて......宏兄さん、やめて......」

しかし、江川宏は微塵も動じることなく、だが、私が彼と視線を交わしたその瞬間、彼の瞳には深い忍耐が見えた。

金沢世之介はまだ数え続けた。「2......」

江川宏は頬をきつく噛み締め、手首を軽く振り、片手で銃を装填した。

「1......」

「バン——」

銃声が鳴る瞬間、江川宏は突然銃の方向を変え、正確に私に向けて引き金を引いた!

私は完全に硬直し、体中の血が一気に冷え込んだ。

彼が諦めたのは、やはり私だったんだ。

私を死なせても構わないか。

絶望が瞬く間に全身に染み渡り、私は呆然と江川宏のいる方向を見つめたが、視界は焦点を失っていった。

予想していた痛みは来なかったが、体のどこかが鋭く痛み、心にまで及んだ。

「俺が自ら望んだこと......」

「今、必死に妻を追いかけているんだ......」

「これからの九十九歩は俺が歩くから、南はここで大人しく待っていればいいんだ。最後の一歩だけは退かないでくれ」

「清水南、俺は本気だ。必ず埋め合わせる。南を失いたくない」

「俺は下心を抱いている犬だ......」

「何があっても、俺を信じてくれ」

「......」

妻を追うって、深い愛情って、すべてがこの瞬間、大きな嘲笑となった。

すべて嘘だった。

彼の私への愛情は、もともと一銭の価値もなかった。

私が馬鹿だった。彼が私を選ぶと天真にも期待していたなんて......

彼は決して私を選ばない。

決して選ばないんだ。

清水南、なんて愚かなんだ!

金沢世之介は再び笑い出した。「ハハハ、江川社長、怒らないで、ただの冗談さ。こっちは藤原家のお嬢さんだし、もう一人はまだ一応社長の妻だ。俺が手出しするなんてできるわけないじゃないか」

「でも、正直驚いたよ。江川社長も、結局は新しいものを好んで古いものを捨てるっていう古今不変の法則から逃れられないんだな!」

江川宏の漆黒の瞳に、薄く冷たい氷霧が広がった。「もう解放してもいいか?」

「藤原さんを選んだんだから、もちろん連れて行っていいよ、ご自由に!」金沢世之介が言った。

江川宏はゆっくりと歩いてきた。
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