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第261話

河崎来依がこんなに真剣な表情を見せるのは滅多にないことで、私は心の中に言い表せない不安がこみ上げてきた。

まるで何かが壊されようとしているかのようだった。

私はじっと河崎来依を見つめ、唇を軽く噛んで言った。「覚悟はできたわ、話して」

「実は......」

河崎来依は言葉を詰まらせ、歯を食いしばった後、一気に話し始めた。「大学の時、南を保健室に連れて行ったり、食事を運んでくれたりした人は、江川宏じゃないんだ!」

江川宏じゃない?

頭の中が一瞬、真っ白になって、ぼーっとしてしまった。

しばらくして、ようやく我に返ると、胸に重い石がのしかかったような感覚がして、声が震えた。「本当なの?」

本当のことだということを、実は分かっていた。

河崎来依はこのことが私にとってどれほど大切かをよく知っていた。彼女が確信がないなら、こんなことを言うはずがなかった。

ただ......

それなら、私が今まで抱いてきた思いは一体何だったのだろう。

河崎来依は頷いた。「うん」

「じゃあ......本当に私を助けてくれた人は......」

私は深く息を吸い、冷静さを保とうと努めて言った。「本当は山田先輩だったの?」

河崎来依は驚いて、「どうして知ってるの!?」

「だからそうだったのね......」

私は質問に答えず、心の中では次々と切ない思いが溢れ出した。

だから。

江川宏は、私が好きだったのは山田時雄だと思い続け、私と山田時雄の関係を何度も疑っていたんだ。

だから、私がこの出来事がきっかけで彼を好きになったと伝えた時、彼はあんなにも動揺したんだ。

彼は私にこう尋ねた。「もし俺じゃなくて他の人が助けていたら、南は俺を好きになるか?」

私はもっと早く気づくべきだった!

私が思い込んでいただけで、全ては私の盲目さが招いた結果だった......

私はこんなにも必死に追い求めてきた光は、実は一度も私を照らしてくれていなかったんだ。

彼の優しさは、ほんの一瞬たりとも、私に向けられたことがなかった。

彼は私を愛していなかったのに、私が勘違いして彼に心を痛める姿を冷たく見守っていただけだった。

あの銃がためらいなく私に向けられたのも、当然のことだった。

最初から全ては、私の一方的な思い違いだったんだ。

最初から最後まで!!

河崎来依は窓の外を見ながら、
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