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第265話

役所の外に立った瞬間、私は今までにないほどの軽さを感じた。

河崎来依は私と一緒に残りたかったが、彼女を先に帰らせた。

最初に一人で始めることを選んだから、今は一人でスッキリと別れを迎えるべきだ。

私は道路を行き交う車を見て、結婚する人々や離婚する人々が出入りするのを眺めていた。

それは簡単に判断できるんだ。

笑顔の人は結婚し、無表情かお互いに嫌悪の目を向けているのは離婚だった。

感情が壊れると、常に品位を欠いていた。

幸いなことに、江川宏と私はその問題を抱えていなかった。

彼は私に感情を持っていなかったし、私も江川宏を誤って8年も愛してしまっただけだ。

ただ、予想していなかったのは、江川宏が一人で来なかったことだった。

彼は黒い光沢のあるマイバッハから降りてきて、その後ろには藤原星華がいた。

彼の表情はいつものように冷たく無表情で、まるで何も異常を感じていないかのようで、片手をポケットに突っ込み、静かに言った。「入ろう」

その口調はあまりにも日常的で、まるで離婚証明書を取りに来たのではなく、ただの食事に来たかのようだった。

彼のいつもの薄情さを、極限まで発揮していた。

「うん」

私は目を伏せて頷いた。

藤原星華も一緒に入ろうとしたが、江川宏は口元を歪め、笑みはなく、声が一段と冷たくなった。「どうした? 俺が偽の離婚証明書を取ってお前を騙すと思ってるのか?」

「そんなこと思ってない! だって、私があなたと結婚したいからこそ!」

藤原星華は彼に甘い声でからかい、車に戻って座り込んだ。「じゃあ、待ってるわ」

証明書の手続きは、今までにないほど順調に進んだ。

新しい離婚証明書を手にした瞬間、私は完全に解放された。

全身が大きく息を吐き出したような感覚だった。

私は長く滞在するつもりはなく、手を差し出し、淡々とした声で言った。「私の分をください」

江川宏はそのうちの一冊を開き、親指が私の写真をそっと撫で、深い目をして尋ねた。「南......順調か?」

「順調だよ」

離婚までしたのに、こんな風に偽りの関心を演じる必要はないだろう。私は彼の手から離婚証明書を取り上げた。「これからはもっと順調になるだろうね」

私はゆっくり言って、何かを宣告するかのように言った。

江川宏の鋭く深い顔立ちが一瞬和らぎ、まるで注意を促すように、ゆっく
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