第17章

十数分後、車はゆっくりと庭に入った。

「家に着いたよ、江川宏」と私は車のドアを開けながら言った。

思いがけず、私がドアを開けると同時に、泥酔して意識を失った男も一緒に倒れこんできた。

私は眉をひそめ、彼を支えながら言った。「自分で力を使えるか？」

返事はなかった。

寝ている途中の佐藤さんを起こして、江川宏を一緒に部屋に連れて行くしかなかった。

「若奥様、何か手伝いましょうか？」と佐藤さんが尋ねた。

「いいえ、早く寝てください」

私は少し気まずくなり、もともと夢を邪魔してしまったので、もう一度お手数をかけるわけにはいかなかった。

佐藤さんが去った後、酒の匂いで吐き気がするのを我慢しながら、江川宏の靴とネクタイを脱がせ、身を起こして階下に下りるつもりだった。

振り返ると、彼に手が握られていることに気づいた。

彼は目を閉じてつぶやいた。「南……」

「……」

実際、彼が私を呼んでいるとは思わなかった。

むしろ、彼と江川アナは既に夫婦と呼び合う関係に発展している可能性が高い。それに、私の名前は妻の代名詞として呼ぶ可能性が高い、何を言っても三年間の結婚生活で慣れただろう。

私は彼のまぶたを開いて言った。「江川宏、私は誰かわかるようにしなさい」

「南……」

彼は私の動きを避ける同時に身を翻して、私の手をもっと近くに引き寄せ、低い声で言った。「清水南、俺の妻は清水南だ」

心の奥が一瞬震えた。

そして冷静に自分に言い聞かせた、彼はただ酔っているだけだと。

真剣に受け取る必要はなかった。

彼は目が覚めているとき、他の人を選んだ。

私は唇を噛んで、淡々と言った。「そうか、でもあなたは彼女が好きではないし、好きではない女を妻にするのは大変だろう」

彼がオフィスでお爺さんと話した言葉は、私の心にはっきりと刻まれた。

清水南、もう混乱しないでください。

「大変じゃないよ...」

彼は私の手の甲に軽く触れ、冷たい顔になんと満足そうな表情が浮かび上がった。「私の妻はとてもいいんだ、彼女は最高の女性だ」

「よく知っているね」

江川家に嫁いだ後、年上に対しても江川宏に対しても、私は完璧にやった。

彼が私を好きでなくても、何か問題を見つけることはできなかった。

江川宏は何かの言葉をつぶやいたが、私には聞き取れなかった。多分、誰もいないと思ってまた眠りに落ちた。

彼が眠り込んだ後、私は自分の手を抜いて、酔い覚ましのスープを作るために階下に降りた。

彼は飲みすぎると、夜中によく目を覚ますが、酔い覚ましのスープを飲むと、二日酔いで眩暈にならなかった。

三年間で身についた習慣かもしれないが、離婚もすでにまとまり、自分の家ではない場所からも引っ越してしまったのに、彼を気遣うことが無意識になってしまった。

沸騰した鍋から柔らかく煮えた食材を取り出すまで、私は後知恵で反応し、悔やんで自分の額を叩いた。

何をしているの？

離れたいけど、食べ物を無駄にするのも良くなかった。

もういい、一日の善行として、野良犬の世話をすることにしようか。

自分に合理的な言い訳を見つけた。

煮上がったら、薬材を濾して、酔い覚ましのスープを持って階段を上がった。

ベッドの横に置いて出かけようとしたが、ベッドのそばに立った途端、真っ黒な瞳に出くわした。

私はびっくりして、なんとなく不快な気持ちになった。「起きたの？」

「うん」

「これ、酔い覚ましのスープだよ」

私はびくびくするようにして、スープをベッドの横に置いた。「飲む気があれば飲んでいいし、飲まないならこぼしてもいい」

言葉が終わると、逃げ出したくなった。

思いがけず、半時間前まで酔っ払って意識を失っていた男が、突然腕を伸ばして私の腰をしっかりと掴んだ。

「南、離婚しないでくれる？」