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第13話

夜が更け、ほとんどの店はもう閉まっていた。

私たちは公園のベンチに座り、無言で向かい合った。

しばらくして私は耐えきれなくなった。

「言わないなら、それでいい。私は帰って休むわ」

行一は私を一瞥し、ようやく口を開いた。

「晴奈、考えたことがあるかい?俺たちが生きているこの世界が偽物だって」

私は思わず足を止め、その場で立ち尽くした。

「晴奈が海外に行って、俺が病気になったあの時期、頭の中にいくつもの断片が浮かび上がってきたんだ……」

行一の話を聞くうちに、私は荒唐無稽な話を耳にすることになった。

彼は、私が去った後、ある時に「目覚めた」と言った。

そして、私たちの世界がある身代わりの恋人をテーマとした小説であることに気づいたという。

彼は男性主人公、唐沢理沙はヒロイン。

そして、私はその物語の中の悪役、つまりヒロインの邪魔をする二番手の女性キャラクターだった。

彼の病気やビジネスのトラブルが私に影響を及ぼすかと心配していたために、私は一人で海外に出た。

私が去った後、行一は運命のヒロイン、理沙に出会い、関係を築いていく。

そして私が帰国した後、嫉妬心から理沙に嫌がらせをし、彼らの関係を壊すために手段を選ばない典型的な悪役として振る舞うことになる。

その話を聞いて、私は思わず笑い声を上げてしまった。

「行一、浮気は浮気よ。そんな馬鹿げた話を作らなくてもいいのに」

しかし彼は真剣に私を見つめていた。

「晴奈、俺も最初は夢だと思っていた。でも、理沙に出会ってから起こったことが、すべてその夢の通りなんだ」

私は突然、声を張り上げた。

「行一、私がなぜ海外に行ったのか、本当に知らないの?」

行一は視線を逸らした。

「晴奈、その時、すべての医者が俺の病気に絶望的な診断を下した。俺も、晴奈の考えが分からなくて……」

彼は言葉を切ったが、その意図は明白だった。

言葉にできない怒りが全身を襲った。

彼は言いたかったのは、私が本当に彼の治療をしたいのか、それとも彼の厄介事から遠ざかりたいだけなのか、彼自身も確信が持てない。

夜の公園に私の皮肉な笑い声が響いている。

彼は私の笑い声を聞いたが、話をやめなかった。

二年間、何百もの必死の日々が、まるで笑い話のようになってしまった。

私は自分の顔を触り、手が濡れているのを感じた。

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