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第8話

通常、ヒロインが主人公を諦めると決めた後、主人公はいつも後悔するものだ。

しかし、行一は違った。

挽回しようとするメッセージさえも送ってこない。

彼が理沙を伴って様々なイベントに出席する姿を見たとき、私はどうしても涙を堪えることができなかった。

目を閉じると、17歳のあの年、行一が花束を持って私の家の前に立ち、「一生愛する」と誓ったあの日のことが浮かんでくる。

心変わりするのに、こんなに短い時間しか必要ないなんて。

気力を振り絞って、私は病院で就職することについて考えた。

唐沢理沙がいる病院を選んだわけではない。ただ、その病院には私が研究したいことに必要な設備や条件が整っているのだ。

なのに、行一は「私が唐沢理沙をいじめるのではないか」という馬鹿げた理由で、私の未来を切り捨てようとしていた。

両親に話すのは嫌だった。彼らは森本家と深く関わっているから。どうしようかと悩んでいると、アメリカにいる指導教授から電話がかかってきた。

私はその電話に一筋の光を見つけた。

先生は、私が入りたいと思っている病院と深い協力関係にある。

ちょうど先生がこの街でセミナーを開くという。

先生は私を一緒に誘ってくれた。

しかし、そこで最も会いたくない人たちに出くわしてしまった。

理沙は行一の腕を取り、一緒に会場に入ってきた。

そうだ、理沙が来るのも当然だ。彼女も医者だし、行一はおそらく彼女に付き添って来たのだろう。

理沙は行一の腕を取り、隠しきれない得意気な表情を浮かべていた。

「晴奈さん、ここまで追いかけてきても無駄よ。行一は返さないから」

そして行一もまるで何も考えていないかのようだった。

彼はまず理沙を自分の背後に隠すように守った。

「安心して、誰にも理沙をいじめさせないから」

彼らの前には誰もいない。行一が言う「誰か」とは、私のことだろう。この言葉は私に向けられていた。

無表情のままその場を離れると、行一が追いかけてきた。

「晴奈、もし今からでもあの日の言葉を取り消すなら、まだ間に合うよ」

「私に近づかないで」

私は彼の手を振り払って、ただ気分が悪くなった。

先生は私が国内で困っていることを知り、何も聞かずに自分の発表の機会を私に譲ってくれた。

この機会を利用して、私の地位を上げてくれた。

講演台に上がったとき、唐沢理沙の目
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