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第6話

このメッセージを見たとき、私はちょうど院長とお茶を飲み終えたところだった。

友人からのメッセージ。どの文字も知っているのに、並んでいるとどうしても意味が理解できない。

無意識のまま、私は行一にメッセージを送った。

「志望していた病院に断られた。すごく辛い」

すぐに彼から返信が来た。

「大丈夫だよ、晴奈は本当に頑張っているし素晴らしいんだから、他を見てみよう。ここで無理にこだわる必要はないよ」

私は頬に触れた。手が濡れていることに気づく。

梅雨の六月、空から降り続く雨に私はぼんやりと立ち尽くしていた。通り過ぎる車が跳ね上げた汚水が、無防備な私の体に冷たく染み込んだ。

横から勢いよく電動自転車が突っ込んできて、足首に焼けるような痛みが走る。

全身ずぶ濡れで惨めな私は、足を引きずりながら雨宿りできる場所を探した。

誰かに迎えを頼もうと思ったが、

ふと目に飛び込んできたのは……

レストランの大きな窓越しに、白いシャツを着た行一の姿だった。

彼は指輪を取り出した。

彼らが何を言っているのか見えない。

ただ行一が指輪を取り上げて、向かいの理沙の手に嵌めるのを見ただけだった。

恍惚とした瞬間、出国前のことを思い出した。行一が私を抱きしめ、涙を流していたあの日を。

「晴奈、この試練を乗り越えたら、お前が帰ってきた時、必ず結婚しよう」

理沙は喜びのあまり泣き、二人は幸せそうに抱き合った。

私は雨の中へと飛び出した。

冷たい雨が湿った足元から、骨の奥までしみ込むようだった。

行一の裏切りに気づいたその日から、別れの二文字が頭の中で何度も浮かんでは消えていた。

だけど、私たちは27年間の幼なじみで、10年間も愛し合ってきた。

彼はすでに私の一部であり、血肉のように私の心に根を張っている。

どうやって別れを切り出せばいいのか、この人を自分の中から切り離す方法が分からなかった。

でも今、私は確信している。

もう二度と行一を許すことはできないし、彼が私の世界に現れなければよかったと強く思う。

その夜、行一が帰ってきたとき、彼の顔は満ち足りていた。

他の女性に指輪を贈った後だというのに、私には花束を持って帰ってきた。

「帰り道で見かけたアイスブルーの花、晴奈にぴったりだと思ってさ。これから毎日買ってくるよ」

彼は後ろから私を抱きしめ、耳
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