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第5話

「お前が帰国したばかりで、俺に対して少し不安を感じているのはわかるよ」

「でも、最初にどうしても海外に行きたいって言ったのはお前だっただろう?今さら疑心暗鬼になるのはやめてくれ。困るからさ」

私は心のどこかから壊れるような音が聞こえた気がした。

全身の力を振り絞って笑顔を作ろうとしたが、

笑顔が広がる前に涙がこぼれた。

彼は涙で濡れた私の顔を見て、自分の行動が間違っていると気づいたようだった。

私の手を取ろうと手を伸ばしたが、私はそれを避けたので、彼の手は空中に止まったままだった。

「あなたは私の彼氏なのに、彼女が怖がりやすいってことは知ってるのに、私がどんな人間かはわかっていないの?」

彼は私の視線を避けた。

かつて私の前で子供のようだった彼も、今ではうまく立ち回るようになった。

彼は慣れたように私の首元に顔を埋めて甘えた。

「晴奈、ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ」

「ただ、お前が悪く言われるのが嫌なんだ」

彼は何度も私に謝った。

「晴奈、許してくれないか?」

私は目尻の涙を拭いた。

「いいよ、それならご飯を作ってくれたら許してあげる」

言葉が口をついた瞬間、自分に嫌気がさした。本当に馬鹿げた、くだらない質問だ。

でも、行一はその場で固まった。

「わかってるだろう?俺は料理なんてできないし、キッチンが爆発しちゃうよ」

止まっていた涙が、また大粒となってこぼれ落ちた。

そうか、私はもう彼の特別な存在ではなくなったのだ。

彼は私にたくさんの宝石を贈ってくれたが、私の心の叫びにはもう耳を貸してはくれなかった。

それに、彼はきっと忙しいのだろう。

携帯に理沙からメッセージが届いた。

「ありがとう、行一がここは安全じゃないと言って、もっと安全な家に引っ越そうとしているの。彼はどこを見ても満足しないけど、私は二人一緒ならどこに住んでもいいと思う」

メッセージには愛されている自信があふれていた。

私とは違う。全力を尽くして帰国し、愛する人に会いに来たのに、家を奪われてしまった。

仕事もうまくいかない。

入りたいと思っている病院や研究所は、どこも大小さまざまな障害にぶつかっていた。

私は何度も病院を訪ねた。

院長が仕方なく少し情報を漏らしてくれた。

「あなたはあらゆる面で適しているんだけどね」

「ただ、自分が
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