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第225話

由佳は目を閉じてから書類を手に取り、気を奮い立たせて会議のプレゼンの準備を始めた。

……

「社長、問題が起きました」林特別補佐員が足早にオフィスへ駆け込み、急ぎの声で報告した。「総監督の電話番号やすべてのSNSアカウント、個人情報が全部暴露されています!」

その言葉に山口清次の表情は冷ややかになり、すぐに立ち上がった。

「総監督はすでに素早くその電話番号を停止しましたので、ご安心ください」

「IPアドレスを調査し、証拠を保存して、すぐに警察に通報するんだ!」山口清次の目には冷徹な光が宿り、一言一言を強調するように言った。私的に解決できることもあるが、ある事柄は公にしてこそ抑止力が働く。

誰かが挑発してくるなら、それなりの代償を払わせなければならない!

「はい、すぐに手配します」

山口清次が部屋を出ようとした瞬間、携帯の着信音が鳴り響いた。

彼はデスクの上の携帯を取り上げて通話を開始した。

「山口さん、情報が入りました」

受話器越しに青年の声が聞こえた。

「話せ」

「佐藤孝太は山本さんの親戚で、普段はぶらぶらしているのですが、最近、山本さんの息子と急に親しくなりました」

山本さんの息子は大田彩夏の従兄だ。

山口清次は眉を深くしかめた。

「彼らの取引の証拠はあるか?」

「すでにメールで送ってあります」

「山本さんの息子はおそらく大田彩夏に唆されたのでしょう。二人の関係をさらに調べてください」

「了解しました」

電話を切った後、山口清次は「ドン」と音を立てて携帯を机に置き、目を閉じた。

まさか大田彩夏がこの件に関与しているとは!

山口清次は大田彩夏が自分に薬を盛った時点で、彼女が大胆不敵だと思っていたが、今回のニュースはさらに信じがたいものだった!

彼は大田彩夏を支社に異動させたが、これまでの2回とも、大田彩夏がターゲットにしたのは由佳だった。

すべては、由佳に対する嫉妬が原因なのだ。

山口清次にとって、この嫉妬は全く理解不能だった。

会社に入ったばかりのころ、大田彩夏は彼を助けてくれたことがあり、その返礼として山口清次は彼女を重用し、私生活でも彼女と適度な距離を保ち、普通の友人のような関係を維持してきた。

今回の件がなければ、山口清次は大田彩夏が自分を好きだとは考えもしなかった。

しかも、彼女の行動がこれほどまでに
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