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第227話

「もういい!」山口清次が言った。「たかが些細なことに、山本さんはそんなに真剣になる必要があるのか? 争い続けるほどのことか?」

山本さんは顔をしかめ、「私は会社のため……」と答えた。

山口清次は笑みを浮かべただけで何も言わなかった。

由佳の性格からして、簡単に顧客をブロックするはずがない。よほど顧客が無礼なことをしない限りは。

林副社長が取り成し、「山本さん、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。たかが番組の監督じゃないですか? 大したもんではないです。山口さんは自分の仕事をしっかりやればいい」

林副社長は権力争いには興味がなく、ここ数年、由佳が彼の下でMQをうまく運営しているおかげで、彼自身は心配することなく、ゆったりとした日々を過ごし、十分な配当も得ているという快適な生活を送っていた。

山本さんは誰も自分を賛成しないのを見て、さらに不機嫌になり、由佳を鋭く睨みつけた。

しかし、彼がまだ睨みをきかせていると、背筋が凍るような感覚に襲われた。そっと横目で見ると、山口清次が冷たい目つきでこちらを見ているのが分かり、心の中で震えあがった。彼はすぐにしおれて、黙り込んで座り続け、会議が終わるまで何も言わなかった。

会議が終わると、山口清次は手元の書類を整理しながら、意図的に席に数秒間とどまり、他の人々がほとんど出て行った後で、由佳に向かって言った。「総監督、私のオフィスに来てください」

二人が会議室を出ると、秘書が近づいてきて報告した。「社長、警察の方が休憩室でお待ちです」

「私たち今すぐ行こう」

私たち?

由佳は一瞬戸惑ったが、山口清次が「個人情報を漏洩した者を見逃すわけにはいきません」と言い、警察を呼んだ理由をすぐに理解した。

由佳も本来、仕事が終わってから警察に行って届け出ようと思っていた。

警察は由佳の供述を取り、あとは弁護士に任せることになった。

由佳の個人情報を漏洩したネットユーザーのほか、コメント欄で誹謗中傷を行っていた数人も一緒に訴えられることになった。

警察が去った後、由佳は山口清次の後を追って社長室へ向かった。

「社長、まだ何か用事がありますか?」

「昨日、携帯を車に置き忘れてしまった」山口清次は電話に出なかった理由を説明するかのように言った。

今朝、彼がランニングから戻ったときには、彼女はすでに会社に出勤しており、
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