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第228話

この件がなければ、大田彩夏は支社でも順調にやっていけた。

しかし今、大田彩夏は山口氏の会社で働けない。

由佳はあまり驚かず、「彼女はあなたの部下だから、あなたが決めればいい」と言った。

最初から由佳は大田彩夏を疑っていた。

加波歩美は単に曖昧な話題を作り上げて注目を集めるだけで、誹謗とは言えず、由佳は彼女に対してどうすることもできなかった。

もし本当に証拠が出た場合、山口清次が直接否定すれば、彼女は損をするだけだ。

大田彩夏だけが何も気にせず、山口清次を好きだからといって、暗に自分に注目を集めようとした。

山口清次はゆっくりと由佳に近づき、彼女の前で止まり、手を上げて彼女のこめかみの髪を軽く触れながら、「ごめん」と言った。

大田彩夏の件については、彼はずっと謝らなければならなかった。もし当初彼が彼女を信じていれば、後の問題もなかったかもしれず、彼女がネット上で攻撃を受けることもなかっただろう。

彼女は何も悪いことをしていないのに、まるで陰湿な場所に住むネズミのように、一度姿を見せるだけでみんなから叩かれていた。

由佳は本能的に一歩後ろに下がり、目を伏せて「社長」と言った。

この謝罪がもっと早ければ、彼女は感動したかもしれない。「今は他に誰もいないから、清くんと呼んで」と山口清次は言った。

由佳は表情を変えず、淡々と「社長、私は隼人さんの言うことが正しいと思います。個人的な理由で会社に大きな損害を与えてしまいました。私の責任であり、このポジションに安心しているわけにはいきません。だから、辞めたいです」と話した。

山口清次は眉をひそめ、「それは私の問題で、あなたとは関係ない。安心して働いて、あまり考え込むな」と言った。

由佳は唇を噛んだ。

彼女もあまり考えたくなかった。

ただ、このようなプレッシャーの中で胸が締め付けられて息苦しくなっていた。

会社内でも、どこに行っても自分に向けられる視線を感じ、探るような、見物するような、軽蔑するような、嫌悪するような、卑猥な視線を受けていた……

みんなの前で何事もなかったように仕事を報告するのに、彼女は全力を尽くしていた。

本当に彼女に関係ないのか?

それなら、どうしてこんなにも多くの人が彼女を非難するのか?

「……それなら、家で数日休んだ方がいいかもしれない」と山口清次が提案した。

由佳
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