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第236話

由佳は垂れていた指をぎゅっと握りしめた。

翔は彼女の考えを見透かしたように、「心配しなくても大丈夫だよ。おじいさんは理不尽な人じゃない。彼は何よりも君の幸せを願っているんだ。僕もおじいさんを説得するのを手伝うよ……」

「私…」由佳が何か言おうとしたとき、背後から足音が聞こえてきた。それとともに清次の声が聞こえてきた。「由佳?まだ戻らないのか?兄さんもいるのか?」

翔は清次に笑いかけ、「由佳と少し話していたんだ」と言った。

翔は温厚な性格で、由佳が古い家に住んでいたときはむしろ翔との方が関係が良かった。

清次は特に疑わず、ただ由佳に「さっきはあまり食べていなかったようだけど、戻ってもう少し食べたらどうだ?」と言った。

「うん」由佳は淡々と答えた。

翔は彼らの間で視線が数秒間移動した後、「僕も戻るよ。そうじゃないとまた義姉さんに外でタバコを吸っていたと疑われるからね」と言った。

清次は地面にあったタバコの吸い殻を見て、口元を少し緩めた。

翔は小声で、「彼女には言わないでくれよ」と頼んだ。

「でも、煙草の匂いがするよ」清次は眉を上げて言った。

翔は足を止め、肩に鼻を近づけて匂いを嗅ぎ、仕方なく言った。「外を一周してから戻るよ」

……

昼食後、二台の車が古い家を出発し、墓地の麓で停まった。

墓地に向かう途中から、清次はずっと無言だった。

毎年のことでもある。

以前は不思議に思っていたが、清次は祖父のもとで育ち、父親は早くに亡くなっていたため、父親との感情が深くなく、十年以上も経っているので、そんなに思い出すはずがなかった。

だが今になってようやく理由が分かった。

「父さん、母さん、僕と美咲が拓海を連れて会いに来たよ!拓海、おじいちゃんとおばあちゃんにご挨拶して」

拓海は目の前の墓石を見て、ぼんやりとしていたが、それでも素直に「おじいちゃん、おばあちゃん」と呼んだ。

一方、清次はただ側にしゃがんで、墓石の前に黙って花を置いていた。一言も発せず、父親と呼ぶことすらしなかった。それが感情の薄さのせいなのか、翔の前だからなのかは分からなかった。

そんな清次の姿を見て、由佳の心には複雑な感情が湧き上がった。

お墓参りが終わると、彼らは車に乗って市内に戻った。

「家に帰る?それとも古い家に戻る?」清次はハンドルを握りながら前方を見据えた。

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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
すれ違うのは仕方ない…… だって物語だから……
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