共有

第12話

書房。

藤原清は上奏文に目を通していたが、その手が一瞬止まり、冷たい眼差しを向けた。

「彼女がお印を欲しいと言ったのか?」

伝達に来た蔵人は身震いした。

「そうです、皇上陛下。皇后陛下が殿外でお待ちになっていますが、その目的はお印です」

しかし、そのお印は皇貴妃の手元にある。

皇后がこうしてお印を求めるのは、明らかに揉め事を起こそうとしているからではないか!

蔵人の額に冷や汗が滲み、皇帝の怒りが自分に向かうのを恐れていた。

御座の後ろにある大きな屏風に影が揺らめいていた。

藤原清の顔色は明暗の入り混じる中、鷹のように鋭く、細長い目が危険な光を放っていた。

「彼女に伝えろ。これ以上不埒なことをすれば、彼女を廃位するつもりだ」

「かしこまりました!」

……

書房の外。

紫琴音の目は静かで、怒りも喜びも感じさせず、まるでこの世のものではないかのようだった。

彼女の前にいた蔵人は皇帝の言葉を伝え終わり、さらに忠告を添えた。

「皇后陛下、どうかお戻りください」

「このお印は皇貴妃様がずっと使用しており、皇帝が彼女から取り上げることは不可能です」

「皇貴妃様ご自身が放棄することでもない限り」

香子はその言葉を聞いて憤慨した。

お印は元々皇后のものであり、後宮の大権の象徴だ。

暴君は礼儀も何もない、廃位をちらつかせて脅すとは!

おそらく彼の心の中では、皇貴妃が皇后だと認めているのだろう。

こんなに偏った態度では、皇后陛下がどう頑張っても敵うはずがない。

紫琴音もまた、皇帝のこの行動に不満を感じていた。

規律がなければ、秩序は成り立たない。

軍営でそうであるように、皇宮でも同じだ。

暴君のこのような行為は、愚かすぎる!

「香子、弘徽殿に戻る」紫琴音は冷たく命じた。

「かしこまりました、皇后陛下!」

香子は心の中で怒りを抑えきれなかった。

暗君に謁見を求めるべきではなかったのだ。

承香殿。

皇貴妃は声を上げて笑っており、非常に機嫌が良さそうだった。

「皇后がお印を要求するなんて、滑稽で笑えるわ!」

侍女がそれに同調した。「そうですね。この宮中では誰もが知っています。皇貴妃様こそが
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status