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第19話

坂上真守は自らをやつがれと称してはいるが、その口調には明らかに高慢な態度が透けて見える。

まるで自分が薬を求めに来たのだから、皇后が必ず渡さなければならないかのように。

しかし、いくら呼んでも誰も応じない。

代わりに、さらに遠くに住む掌侍が現れた。

掌侍の顔は疲れ果てていた。主人が寵愛を失ったため、彼女は承香殿の最下級にすら劣る立場に成り下がっていた。

坂上真守を見るや否や、彼女は卑屈な態度を取った。

「坂上様、どうか焦らないでください。皇后陛下はまだお目覚めになっていないのかもしれませんので、急いでお知らせしてまいります」

坂上真守は鼻を高く上げ、顎を突き出して言った。

「じゃあ、さっさとやれ!」

「はいはい、すぐに」

掌侍は内殿へと駆け込み、皇后が化粧をしているのを見て、すぐに笑顔を浮かべて近づいた。

「陛下、皇貴妃様が頭痛を訴えております。この機会に薬をさしあげば、皇帝陛下がきっと陛下をお褒めになり、再び寵愛を得ることができるでしょう。

「そうお考えではありませんか?」

紫琴音は眉を描く手をゆっくりと動かし、全く焦る様子もなかった。

「薬はもう無い」

掌侍の笑顔は瞬時に消えた。

「陛下、本当に無いのでしょうか?もう一度探してみては……」

彼女が言いかけた瞬間、香子の顔が一変し、厳しい口調で言った。

「大野掌侍!あなたは何を言っているのですか!陛下ご自身の物を、あなたが彼女以上に覚えているとでも?陛下がおっしゃった通りに報告すればいいのです!」

掌侍は内心悔しく思った。

この香子の小娘めめ。よくも自分に説教をするとは。

もしこの弘徽殿に囚われていなければ、とうに他の主人に仕えていただろうに!

誰がこんな役立たずの主人に付き従って苦労するものか!

……

承香殿では、皇貴妃が頭痛に苦しんでいた。

内殿では、太医が彼女の痛みを和らげるために針治療を施していた。

外殿の紫檀の椅子には、皇帝が厳かに腰掛け、眉をひそめていた。

「弘徽殿に派遣した者はどうした!」

その言葉が終わるや否や、坂上真守が転がり込むように入ってきた。

「皇帝陛下!皇后陛下が、その薬はもう無いと……」

藤原清の鋭い目つ
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