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第308話

松本若子はしばらくしたらひっそりとほかのところへ行き、子供を産む予定だった。

出発前に少しでも多くおばあちゃんと過ごしたいと考え、翌日には早速おばあちゃんの元へ向かった。

石田華は彼女の姿を見ると、少し眉をひそめた。「若子、また来たの?」

「おばあちゃん、なんでまた来たなんて言うの?」松本若子は不満そうに唇を尖らせ、「まるで私のことをうっとうしがってるみたい。おばあちゃん、私があなたの孫であることに変わりないでしょう?もう私を可愛がってくれないの?」と冗談めかして言った。

松本若子はわざとそう言っているだけで、本当は不機嫌なわけではなかった。

おばあちゃんの前では甘えたくなるのだ。

石田華は笑いながら、「この子ったら。おばあちゃんがあなたを可愛がらないなんてありえないでしょ?でも、来たり行ったりで疲れないのかい?」と優しく言った。

「全然疲れないよ!」松本若子は彼女の隣に座り、おばあちゃんの腕にしがみついた。「おばあちゃんに会えると、元気いっぱいで、とっても嬉しいの!」

「まったく、この子ったら。おばあちゃんもこんなに可愛がりがいがあるってものだよ」石田華は満足そうに微笑んだ。

「おばあちゃん」松本若子はそっと彼女の肩に頭を乗せ、全体重はかけずに甘えた。

「どうしたの?」

「別に、ただ呼んでみたくなっただけ」心の中で松本若子は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「おばあちゃん、ごめんなさい」

と密かに謝罪した。

「若子、お前さん、何か心配事でもあるのかい?おばあちゃんに話してごらん。修がまた何かしたのかい?」

「違うのよ、おばあちゃん。この前お話ししたように、少し気分転換に旅行に出ようと思っているの」

石田華はうなずき、「ああ、そうだったね。いよいよ出発するのかい?」

「うん、数日後には出発するつもりだから、しばらくの間会えなくなるかもしれない」

石田華は優しく彼女の頭を撫で、「心配しなくていいよ。おばあちゃんはお前を縛りつけるようなことはしないからね。おばあちゃんは、お前が楽しんでいるのを知るだけで十分幸せなんだよ」

松本若子はその言葉に胸がいっぱいになり、思わず涙がこぼれそうになった。「おばあちゃん、ありがとう」

たった一言、「あなたが幸せであれば、それで私も幸せ」

こんなに簡単な言葉なのに、どれだけの人が実行できるだろ
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