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第310話

石田華は言った。「若子、義母を責めるんじゃないよ」

松本若子はうなずいた。「おばあちゃん、私は彼女を責めませんよ。義母と争うつもりはないし、彼女もどこか寂しそうな人ですから」

「そうだね。お前の義母もある意味、不幸な人さ。もう一度やり直せるなら、あの時彼女をお前の義父に嫁がせたりしなかっただろうね。私の過ちでもあるんだ。でもね、私が義母を責めるなと言ったのは、彼女が可哀想だからじゃないんだよ。実は、彼女がお前に厳しくしたのには別の理由があるんだ」

松本若子は不思議そうに尋ねた。「おばあちゃん、それはどういう意味ですか?」

「お前の義母が厳しくしてきたとき、何が起きたか覚えているかい?」

「ええと......」松本若子は戸惑いながら答えた。「ただ、義母が私に意地悪したところしか覚えていませんが......」

「ははは」石田華は笑いながら、松本若子の額を軽くはじいた。「この子ったら、そんなことを言って。私はね、お前に、義母が厳しくした結果、何が起きたかを聞いているのさ」

松本若子は少しぼんやりとしながら額をさすり、「結果って......」と考え込み、ようやく答えた。

「結果として......修が義母と口論になりました」

「そうだよ」石田華は微笑みながらうなずいた。「やっと、核心にたどり着いたね」

「修はあなたを守るために、実の母親と口論したんだよ。さて、光莉は一体何を考えていたんだろうね?彼女はとても賢い人だ、何の理由もなくあなたに意地悪をする必要なんてない。愚かな人ならともかく、まさかお前の義母を愚かだとは思っていないだろう?」と石田華が指摘すると、松本若子はハッと気づいた。

「おばあちゃん、つまり、義母がわざと私に厳しくしたのは、修の反応を見るためだったんですね?」

「そうだよ」と石田華はうなずき、「さあ、もっと大胆に考えてみなさい」と促した。

松本若子はさらに考え込み、驚きを含んだ表情で言った。「おばあちゃん、義母は私に修の反応を見せたかったんじゃないですか?」

その説明なら、伊藤光莉が急に性格を変えたように見えた理由も納得がいく。

彼女は冷静で賢い女性であり、無意味に人に対して意地悪をするような狭量な性格ではないのだ。

「そうさ」石田華は微笑んで言った。「義母はあなたに、あなたが困っている時でも修があなたを守ることを示したかったん
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