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第315話

「この世の中、影響を与えることなんていくらでもあるわ」伊藤光莉は冷たく言った。「君だって小さい頃に両親を失ったんだろう?皆が言うように、『親がいない子は悪い道に進みやすい』って話だけど、君は立派に育ってるじゃない」

光莉の冷淡な口調に、松本若子は少し驚きつつも、すぐに反論した。「それは、おばあちゃんがずっと愛情を注いでくれたからです。両親がいなくても、私は温かい家族の愛を感じていました。でも、修は違います。彼には両親がいても、幼い頃からお父さんはお母さんと離れていて......そしてお母さんは......」

若子はそこまで言って、自分が言い過ぎたと感じ、言葉を飲み込んだ。これ以上話せば、光莉を責めているように聞こえてしまうかもしれない。

彼女は和解しに来たのであって、争いに来たわけではなかった。

「それで?彼の母親はどうなんだって?」光莉は冷淡な目で若子を見つめ、問い詰めた。「続けて言いなさいよ」

若子が黙っていると、光莉は自分で言葉を続けた。「つまり、彼の母親も彼に無関心だったと言いたいんでしょ?」

若子は慌てて、「そんなことを言いたかったわけじゃないんです。ただ......」と説明しようとした。

「もういいわ」光莉は若子の言葉を遮り、「言いたいことは分かってるわ。あの時のことは私も驚いたわ。それから、電話でもしてみようかと思ったけど、何を話していいのか分からなくて」

「それなら、二人で一度、ゆっくり食事をしてみてはどうですか?」と若子が提案すると、光莉は一瞬戸惑った表情を見せた。

「二人きりで食事?」光莉の視線には迷いが浮かんでいた。

若子は驚いて、「まさか、今まで息子さんと二人きりで食事したことがないんですか?」と信じられない思いで聞いた。

光莉は苦笑しながら、「そうね、私たち親子は滅多に顔を合わせないわ。気づいたら、藤沢家の人間ともどう接していいか分からなくなってしまったのよ」と答えた。

若子は問いかけた。「彼はあなたの息子です、他人じゃない。あなたも藤沢家の一員です。修と一度、しっかり話してみる気はないんですか?」

伊藤光莉の座る姿勢は、さっきまでのような自然さを失い、どこか落ち着かない様子を見せていた。

「あの子、今は私と会いたくないんじゃないかしら」

「試してみなければ分かりませんよ」松本若子は優しく促した。「長年積もった
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