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第318話

「じゃあ、今からお母さんに電話を渡すわね。二人で直接、時間を決めて話して」

松本若子は藤沢修との通話を伊藤光莉に渡した。

光莉は、若子の勢いに驚きながらも、電話を耳に当てた。修が何かを言うと、

光莉は軽くうなずき、「ええ、分かったわ」と応えた。

「じゃあ、それで」

「ええ、またね」

光莉が電話を切ると、若子に向き直り、「修と時間と場所を決めたわ」と伝えた。

若子はほっと息をつき、内心少し不安だった試みが思った以上にうまくいったことに驚いていた。「よかったです。お義母さん、当日はぜひ落ち着いて、穏やかに話し合ってくださいね。もう二人が口論するのは見たくないですし、親子として大切な時間を取り戻してほしいんです。お義母さんが息子さんを大事にしていること、修もきっと感じていると思います」

光莉は少し恥ずかしそうに微笑んで、「私は、本当に母親としての役割が分かっていないかもしれないわ。自分の殻に閉じこもって、結局、あなたのような若い人にさえ見劣りしてしまうなんて......」

と小さくため息をついた。

若子は彼女の肩に手を置き、優しく微笑んで言った。「大丈夫です、今からでもきっと間に合いますよ」

光莉は若子の手を握り返しながら、「もしよかったら、その時一緒に来てくれないかしら?私、一人だと緊張しちゃって......」

「私も一緒ですか?」若子は驚きながら尋ねた。「でも、親子二人だけの時間を邪魔しないでしょうか?」

「いいのよ」光莉は言った。「あなたがいなければ、この機会すらなかったかもしれないし、あなたがそこにいてくれると、もし何かあった時のクッションにもなるでしょう?」

若子は少し考えた後、うなずいて、「分かりました。では、当日は一緒に行きますね」と承諾した。

その時、光莉の電話が再び鳴った。彼女はそれを取り、「もしもし」と応答した。

「前に言った通り、この融資は通さないと決めているんだけど」

「何ですって?じゃあ瑞震の用意した資料を送ってくれる?」

そう短く話した後、光莉は電話を切った。

「お義母さん、さっき話してた『瑞震』って、日本のあの瑞震社のことですか?」松本若子は尋ねた。

光莉はうなずき、「そうよ」と答えた。

「どうしてあの会社への融資を見送ったんですか?確か、あの会社って順調に成長してるはずですよね?」

「表面的にはね
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