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第15話

日中は気温が高かったが夜風は暖かく心地よかった。美穂はすぐに病室へ戻らず、2階のテラスに出て風に当たっていた。

スマホにはSNSのメッセージと、美帆からのLineが届いていた。美帆から「どこに行ってたの?まだ帰ってこないの?」というメッセージが届いていた。

美穂は「お母さんのところにいるよ」と返信した。

すぐに美帆から「お母さんはどう?」というメッセージが届いた。

「相変わらず」

「相変わらずなら、それもいいニュースだよ。もしかしたら、いつか奇跡が起きて、お母さんが目を覚ますかもしれないし」

美帆の励ましに美穂は少し気が楽になり、「その言葉、借りるね。今日は遅くなるかもしれないから、先に寝てて」と返した。

「分かった。何かあったら連絡してね」

美穂は「愛してる」のスタンプを送った。

その時、「カシャッ」と音がして、周りが一瞬明るくなった。美穂は慌てて振り返った。数メートル離れたところに、スマホを持った、見た目が上品な男性が彼女を見つめていた。カメラのレンズは彼女の方を向いていた。

彼女が振り返ると、男性は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに少し照れたように笑った。

美穂は口を一文字に結び、男性の前に歩み寄り彼のスマホを奪い取ると冷たく言った。「知らない人を勝手に撮影するのは、肖像権の侵害って誰も教えてくれなかったの?パスコードは?」

男性は一瞬驚いたようだったが、少し面白そうに「0712」と口にした。

美穂はスマホを解除し、中を確認した。そこには、先ほど撮られた夜景の写真が1枚あるだけで、彼女の写真はなかった。

フラッシュが光り、自分がスマホを奪うまでの間はほんの数秒。写真を削除する暇はなかったはず。つまり最初から彼女を撮っていたわけではなかった。

美穂「……」

完全に恥をかいた。

どうにかこの場を収めなきゃと考えていた時、男性が先に「ごめんなさい。ただ、下の夜景がきれいだったので撮ってしまいました。誤解させてしまいましたね」と話しかけてきた。

美穂はすぐに「悪いのは私です。神経質になってしまって、本当にごめんなさい」と謝り、スマホを返した。「夜景の写真、素敵ですね。もしかして、写真家さんですか?」

男性は笑いながら、「いや、趣味で撮ってるだけです。フラッシ
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